愛するひととの悲しい別れを
少年のころ聞いた鳥の啼きごえを
れきしの谷間を
浮かばれないぼくを
そっとしておいてくれるのは宇宙だけだった
星を見つめながら運ばれる
....
愛を囁くと梢が揺れた。
協奏楽の流れる部屋に人は無口で
病人の枕元に一輪の花をかざした。
今在る優しさに皆耳を澄ませた。
枯草の美に共感出来た時、私は和的な幸せを得た。
....
すぐ近くにあるのに、この手じゃ掴めない
あんな傍にあるのに、この高さじゃ届かない
見えるのに掴めない あるのに届かない
むず痒い思いをするのなら
この手が届かなくなる その先を ....
春のほどけぐあいが
足早にすすむころ
キミに会えるだろうか
冬はなにかしら
とんがっているから
（雪が積もった日は別として）
たとえば吸い込んだ空気の凍った針が
肺に刺さるんだという ....
ここに一つのコップがある
いつからそこに在るのか、誰も知らない
最初は空っぽだったそれに
少しずつ、ほんとうに少しずつ
永い時間をかけて
結露した水が溜まり始める
そこへ
空間に漂う ....
バックライトに照らされた
木から落ちる花の香りが
人の鼻をくすぐりくしゃみをさせる
排ガスに巻かれた花の香は
それ自体もいつか白く濁った
うつくしい鉱石になっていく
そんなことは実 ....
春一番が吹くと
春の香りが満ち溢れてくる
木々の新芽の匂い
花の甘い蜜の匂い
それらに釣られて出てくる動物の匂い
また遠く、南海の潮の匂い
春の香りは
暖かい潮風に乗った生きものの匂 ....
影送りができそうなほど
晴れた日のまま
洗濯が終わった頃には
まだらの雪が降っていました
庭の梅はおおきく
息をしたようです
昨日までは
とりつくしまもないようだったのに
....
虫に喰われた枯葉
一枚
ギザギザの
迷路
刻まれてる
右か左か
どちらが美味いか
どちらが軟らかいか
思案して迷走した結果でしょうか？
スズメかカラスか
外敵から
身 ....
どこまでも透き通ってゆく緑の世界に僕は立っていた。
遠く小さい窓辺から新緑に映える森が見える。
手を伸ばすとそれは限りなく広がってゆく。
足元には色鮮やかな花々が咲いていた。
憂 ....
素粒子は閉じ込められた
ひとつの宇宙だった
数えきれない砂粒のように
マイナスエネルギーの
ブラックホールが転生を繰り返し
ぼくらは輪廻を重ねる
孤独であるようで
その集合体は一つであり ....
金木犀の花を瓶に入れ ホワイトリカーを注ぐ
ひと月ほどして 香りも色も酒に移った頃
金木犀の花を引き上げる
その酒は 甘い香りをたぎらせ 口に含むとふくよかな広がりを持つものの まだ ....
涙しか残らない恋でした
躰だけが目当ての偽りでした
恋は涙に反転しました
そんな気持ちになったので
センベロしてみた
千円でベロベロになるほど飲ませてくれる店が下町にあるらしい
「たきおかとカドクラ、ハシゴするけど来る？」
とツレに聞いたら
空腹を我慢でき ....
1 2