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笑い声は好きじゃない
怒鳴り声も号泣も
演説も告発も
講壇やテーブルをガンガン叩くのも

古い写真の笑った顔が好きだ
どこかの いつかの 誰かさん

笑い声は好きじゃない
だけど幼子 ....
木々が襟を立てて拒む間
風は歌わない
先を案じてざわざわと
意味のないお喋りを始めるのは木
いつしか言葉も枯れ果てて
幻のように消えてしまう
すっかり裸になると
しなやかに 風は切られて ....
雨色の絵具
乾かない涙と癒されない傷のために
散り果てた夏の野の花を
鎮魂に疲れ果てた大地へ捧げる
生者の燃え盛る煉獄へ
死者を捉えて離さない
空砲の宣言と
紙で織られた翼のために
憤 ....
海は想う
 「わたしを包み込むこの方は誰?
 凪いだわたしを優しく撫で
 荒れ狂っても受け止めてくれるこの方は


空は想う
 「ちょいと撫でりゃこの通り
 吐息一つで身をよじりやがる ....
{引用=*名を呼ぶ}
名を呼ぶ
ここにいないあなたの
井戸へ放った小石のように
真中深く 微かに響き
瞑っても
抱き寄せることはできず 
こみ上げる揺らめきの 
糖衣はすぐに消えて
 ....
つかみどころのない臓器
痛みはあっても在処のない

つるりと気取った陶器
来客用もちゃんとある

すきま風の絶えないあばら屋
震えている いつからここで

過敏すぎる 肉を削いで裏返 ....
夕日が朝日へ生まれ変わるように
死は生と生のはざまの休息だった

あと少し もう少し
満ち足りて安らかに

しなやかで純粋な生の欲求
飼いならされて往くプロセスで

ただ月や星の光が ....
青い裂果 
   光の手中に墜ち


さえずる鳥 ついばむ鳥
文字へと変ずるか 黒く蟻を纏って


大気に溶けだす肉体は祈り
小さな動物の頭蓋のよう
未満の種子 生を宿すこともなく ....
  ――水脈を捉え ひとつの
薬湯のように甘く
 饐えて 人臭い
       廃物の精液  
            輸入された
どれだけ銭を洗っても
どれだけ子を流しても
      ....
その美の真中に隠された荒野に
どうか 花ひとつ
植えるだけの土地を譲ってくれませんか

血の滲んだ足を隠して走り続ける旅路のどこか
ほんの一歩か二歩
見守る場所を許してほしいのです

 ....
透明な何かがかすめた
それで十分
脳は甘く縺れる痛みの追い付けない衝撃に
砕かれ 失われ
死に物狂いで光を掴もうと
欠片たちは
凍結されることを望みながら
永久に解読不能
時間の延滞の ....
淡い知覚の海に 
ふと あたたかな弾力
戸惑いながらも知らぬ間に 
綻んで往く 原初の蕾


声音と面差しは波のよう
外から内へ 内から外へ
柔らかい殻を脈動させながら
会得して往く ....
いくつもの門を通り
いくつもの問を越え
理解と誤解をなだらかに重ねては
綴り合わせる 欲望の道すがら
まるで古い雑誌の切り抜きや色紙を
ぺらぺら捲るような 陽気な悲しみ
目深に被り直して
 ....
なにもない
わたしのなかには
わたしがいるだけ
気だるげな猫のように
死後硬直は始まっている
小さな火種が迷い込むと
すぐに燻り 発火し 燃え上って
肉の焼ける匂い
骨が爆ぜる――生枝 ....
――黄金が憎いのだ
魅入られ 争い奪い合う 不動の価値が
金の卵を生む鶏は腹を裂かれて殺された
その輝きが飼い主を愚かにした
鳥でも蛇でもおよそ卵には天性の美のフォルムがある
それは新たな命 ....
温泉たまご並みだ

チュンしか言わない雀の喧嘩だ

スノードームだ

死の灰の乱反射だ

おしりが視線を放してくれないのは

即興画家のせいだ

占いみたいに水膨れて

ゆ ....
こみ上げる想いに潤むひとみのように
雪はこらえにこらえて雪のまま
朝いっぱいに流れ着いた三月のある日


外に置かれた灰皿の傍 四人の男が並び
みな壁を背にして煙草を吸っている
見知らぬ ....
大きな箱だった
膝を抱えてすっぽり隠れられるほど
そんな立方体を展開図にして
悲しみの正体や理由
いちいち解説してくれるけど

「まったくなぐさめにならない」 そう言うと

 《なぐさ ....
一枚の写真が燃えている
黒い鉄の花びらの上
ひらめく炎をその身にまとい
そりかえる
水蒸気と煤があいまって
白くにごった煙とともに
封じられた時間も漏れ出して 
霧散する
平面の中の奥 ....
真冬の朝
道を歩いていると
飛べなくなった小鳥を目にすることがある
数年に一度
いつも忘れた頃だ
そっと捕まえ
コートの内ポケットへ忍ばせる
少しおくと
飛べるようになって
やわらか ....
{ルビ理由=わけ}もなくかなしい時がある
理由はあっても 不明なのだ

本当は 
居場所の見当はついている

古い古い付き合いの 理由を
引っ張って来て 座らせて

またも千日手を繰 ....
ギター
雨をはじいて飛ぶ鳥のように
空気を震わせて濁らない
濡れた枝先の微かな光
抜糸された瞳へ飛び降りる
孵しそこねた夢の欠片から
うなじのほくろふたつ
振り向くことのない永遠が
月 ....
日差しは入り江を満たす穏やかな波のよう
ちいさな冬も丸くなった午後の和毛のぬくもりに
鉢植えの場所を移しながら
――古い音楽が悪ふざけ
週日開きっぱなしのトランクをむやみに閉め隅へ蹴る
―― ....
ハトが二羽歩いている
なにもない場所で
なにか啄みながら
啄まずにはいられない
生きるために
地べたを歩きまわらずにいられない


うまく歩きまわるには
首をふり続けずにはいられない ....
あなたの微笑み
落ち葉を踏みしだく音のよう

深まるほどに
冷たくなって

高くポプラの梢を揺らす風
渡らなかった深くない川のせせらぎ

なにかが去って往く
色鮮やかな痛みを灯して ....
 あかい傘ななめに濡れた路をながれ
 雨音のつめたさに背中を欹てながら
 遠景へ漕ぎ出して傍の違和をぼかす
 迷い鳩に差し伸べた手の仕草の嘘を
 街路樹の間から無言のまま見つめる
 おんなの ....
夏の終わり
などと書き出して
景色を眺めまわし
残りの年月を数え切れたかのように
何もせず
何も求めず
人に倦み
風の仕草を見つめては
瞑り 
欹て
ぼんやりとまた開き
終わる夏 ....
山のむこうゆっくりと橙は灰
日暮れて暗く やさぐれて
苦楽の果てに捨てられた
途方に暮れてホウホウ鳴いて
ケルトの老婆アイヌの老婆
とろとろ炙る枯れた掌に
あまいこどものあたまのいたみ
 ....
なみなみと注がれた盃に
映る
かつて訪れたもの
掴むことも消すこともできず

ゆらり ゆらして
とけることもかけることもない

見つめれば朧
目を閉じればありありと

油絵の月の ....
  温雨


雨に洗われた
針葉樹の隙間から顔を出し
ヒヨドリは不思議そうに首を傾げる
蟻の休日
うつろな目をした夏






        一緒くた


    ....
ナンモナイデスさんのただのみきやさんおすすめリスト(60)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
好き嫌い- ただのみ ...自由詩12*17-9-20
風の痛点- ただのみ ...自由詩18*17-9-6
生者の鎮魂- ただのみ ...自由詩11*17-8-14
じっあーつ- ただのみ ...自由詩9*17-8-9
おかし詰め合わせ- ただのみ ...自由詩18*17-7-29
こころ- ただのみ ...自由詩10*17-7-19
混血神話- ただのみ ...自由詩4*17-7-12
青い裂果- ただのみ ...自由詩16*17-6-24
世代論- ただのみ ...自由詩16*17-6-21
花ひとつ分の土地- ただのみ ...自由詩13*17-6-14
スティグマティクス- ただのみ ...自由詩11*17-5-31
三つの微笑み- ただのみ ...自由詩5*17-5-27
白い頂のよう- ただのみ ...自由詩16*17-5-24
喚き散らす肉- ただのみ ...自由詩14*17-5-13
ある錬金術師の告白- ただのみ ...自由詩9*17-5-6
疲れもするさ- ただのみ ...自由詩8*17-4-22
愛煙家- ただのみ ...自由詩13*17-3-25
悲しみの展開図- ただのみ ...自由詩18*17-3-1
炎の遊戯- ただのみ ...自由詩15*17-2-11
いのちさめる- ただのみ ...自由詩15+*17-1-28
かなしい- ただのみ ...自由詩18*17-1-21
INSPIRE- ただのみ ...自由詩14*17-1-14
鈍色の匙- ただのみ ...自由詩16*16-11-23
歩けや歩け- ただのみ ...自由詩14*16-11-2
センチメンタル- ただのみ ...自由詩7*16-10-29
芝居- ただのみ ...自由詩8*16-10-22
残余の火- ただのみ ...自由詩6*16-8-31
夜火- ただのみ ...自由詩8*16-8-27
闇と盃- ただのみ ...自由詩6*16-8-17
夏と雨の短詩・五編- ただのみ ...自由詩11*16-7-27

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