金網の向こうに現在がある。
理屈は液状化して視覚に依存する。
それでも私は言葉を片手に
思考の周縁の限界線を窺う。
時間がない。
身命が有限であることを捨象するほどに、
私は彼方へ急い ....
空き缶を蹴飛ばしたら、僕だった
残っていた中身が飛び散った、僕だった
野良犬が怒り狂って追ってきた、僕だった
慌てて電柱によじのぼって見回した
空き缶は車に潰されてぺちゃんこで ....
近所には小さな墓地があって
近所には野良猫がたくさんいて
墓地の奥は鬱蒼と暗く
木々が生い茂り
墓地を取り巻く壁は
どこまでも白い
その白さに毎朝
昇ってくる日の光が反射し
仕事に ....
とても不思議なのだけれど
秋の蟋蟀や鈴虫のように
羽で鳴く虫の
あの艶やかな音は
なぜにあんなに高く響くのだろう
あんなに小さな
触れれば儚げな羽なのに
擦り合わせて出す音の仕 ....