付き合いはじめて間もないころに 
可愛い女の子を家に連れてきたら
           (あのお嬢さんはやめときなさい)って言われたよ
よけいなお世話だよね。

ロシア人のお嬢が働くお ....
昔もらった
ポケットティッシュが
引き出しから出て来た

あの頃はしあわせだったけど
今はそうでもない
ふと思ってスマホで
「しあわせ」を検索してみる

奈良時代は
為の文字の「為 ....
冷蔵庫のフリーザーのところにある
あの白いプラスチックでできた
板チョコレートをくり抜いたような形をした容器に
お茶を入れて凍らせて
それをふつうの氷のようにコップに入れて
そこに冷たい ....
磨かれた廊下に深海魚たちがゆらり
ゆらゆらとゆっくり泳ぐ
深い眠りに就いているのか
夢をみているのかわからない
天気予報では明日は雷雨
深海魚には予報も関係なくて
廊下をゆらゆらと泳いでる ....
あの頃のぼくたちは
激しくて とても激しくて
激し過ぎて
互いに深い傷をつけあったね

きみはとても純粋で
長い黒髪が似合っていた

ぼくは酔って想い出話しをすると
きみは少女のよう ....
庭に数式の花が咲いていた。
よく見かける簡単なものもあれば、
学生時代にお目にかかったややこしいものもあった。
近づいて、手でもぎると、
数と記号に分解して、
やがてすぐに、手 ....
のんびりしている時に
突如、このままでいいのだろうか
などと考えて焦燥感に駆られる

なんか、やばいんよ

だから、努力みたいなことをする
それは小学校中学校とはまた違う形の努力
 ....
庭に数式の花が咲いていた。
近づいて手でもぎとると
数と記号に分解して
手のひらのうえですっと消えた。
庭を見下ろすと
数式は、もとの花に戻っていた。

 *

庭に出 ....
北の湖の{ルビ畔=ほとり}に

{ルビ春楡=はるにれ}の大樹が唸るように{ルビ聳=そび}えている

その根元にきみを置いて写真を撮りたい

そそぎこむ小川には姫鱒の求愛激しく

やがて ....
 京都三条大橋の側にあった
 六階建の大きな旅館
 非常階段の踊り場から見下ろす
 起き抜けの街の静けさが好きだった

 あの頃は赤のマールボロを一日半箱吸っていた

 廊下の重い鉄扉が ....
敵であり、
味方であり、
ボクの恋人であり、
油断の出来ない女だった

彼女が欲しいのは男らしさ
弱い男なんか目じゃない
心の傷を舐めてなどくれない
辛い時に、優しくもない

だけ ....
美酒に酔い

漁期が終わる明日を待つ

魚影は薄いと知りながら

銀鱗の重みを忘れぬよう

今宵最後の夢を見る
むかし戦争があったなんて
――きっと嘘だ、

円柱型のチョコレートを
小さな花紋のある包み紙を破って、
贈り物だと信じて食べた
チョコを食べると、熱くなって
自分が強くなるのを感じた
 ....
雪がきゃっきゃと笑って降ってくる
雨が凍って死んだだけの可愛い結晶よ
雪が積もって白く街は染まる
雪が自動車に轢かれて茶色く道は染まる

人の手に落ちたが故に
結晶は雨だったことを思い出す ....
もがいて水面から顔を出す
ように息をするかろうじて
ポジティブ思考
が大事です
足首に錘
つけられても
まだ笑えます
夢も見れます
今日一日を楽しみに
起き上がります
階段をおりて ....
ついでに牛乳を買ってくると
君が出ていったまま
何回目かの夏が来て
僕は未だに
コーヒーをブラックで飲んでいる

砂糖くらいは
入れさせて欲しい

白と黒で言ったら
どちらでも無い ....
心の海に巻き戻すフィルムが
情熱を失くし灰になる夜

思い出せないあの頃のように
いつか消えてしまうものを何個も
抱えた身体に光のスキャン

爆弾みたいな重さと匂いで
解るほど簡単な夢 ....
ここは自由の部屋
障子の向こうからはこどもの声
明日が待ち遠しかった昨日
明日をうっとおしく思っている今日
ずっと温かいままの布団の中で
こんぴゅうたあに触れている指先だけが冷たい
定刻に ....
話す言葉は尽きて
自棄になって木曜日
雨戸を開けて
電気ケトルで温めた ぼくは
インスタントコーヒーを淹れて
砂糖と牛乳を足して飲む
少しずつ不安が焦燥になって
ぼくの中の胃を揺する
 ....

街はすみずみまで霧に覆われていた
平等に満ちている粒は
白いサプリメント

普段は透明が満ちていて
遠くまで見渡せた
海に点在する小さな島や
船が描いてゆく波のような道までも

 ....
父が玄関先に佇んでいる。
綺麗に仕立てたスーツを着て。

奥の部屋から出てきた私に
父は聞いてきた。

「俺は、いつ死んだんだ?」

私は一瞬
間を置いて答える。

 ....
とびっきりの笑顔ひとつください
おいくらでしょうか?

こころの痛みを鎮めるお薬ひとつください
どこかにありますか?

曇りのない青空のもと
もうお気に入りの傘も要らないと
言ってくれ ....
生きづらそうだねと言われる度に
小さな箱に押し込められるようで
そんなことないって言えない彼らの善意に
大丈夫って言えない自分の弱気に

例えば生きづらさで紙幣数十枚損するんだったら、預金通 ....
帰宅の歩みは
豚汁をもとめていた

豚バラ
ゴボウ
里芋
ねぎ
コンニャク
油揚げ
ワカメなどもちょっと良い

何時もの妻との阿吽は通じるのか

路を間違えながら
トボトボ ....
秋と冬の境目の
限りなく冬に寄り添う秋だから
ならべてみたくもなる
あったかいものをしこたまに
{ルビ炬燵=こたつ} 湯たんぽ 綿入れ{ルビ袢纏=はんてん}
焼き芋 甘酒 鍋料理
{ルビ熱 ....
どんな紐も 間違いではないとしても
許されてはいけない夜
打ちつけた卵から雛はかえらない

液晶、あるいはブラウン管
はじめてじゃないってことは
これからもまたってことなのかな?

 ....
ヒノキのカウンターの向こうから柔らかな湯気が香る
銅鍋が静かに舌の記憶を誘う
今夜は何にしようか…

まずはこんにゃくとダイコン

え と…

里芋に牛筋にガンモだな

冷え ....
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