わたしは
片付けきれない部屋
足の踏み場もなく
散らかったまま
古い紙袋からは
見つかってはヤバいものたちが
虎視耽々こちらを窺う
ベッドの中には
初恋の人を模した
バラバラの詩体
....
わたしがまだ、
母のお腹の中にいたときの記憶。
狭いアパートの四畳半。
低い天井。
薄暗い曇りガラス。
脚が四本ついた白黒のテレビ。
テレビの横に置かれた背の低い茶箪笥。
まあるいち ....
ある日
神さま養成所の応募に
一人の悪魔がきた
どのような動機で志願されましたか
はあ、ふとやりなおしてみようと思ったもので
採用担当の会議は紛糾した
悪魔が改心するわけがない ....
夕闇の霧雨で
金木犀の気だるさは土に染み込む
僕の落とし物は
人々の雑踏一粒
光を反映させてはみたが
苦しくなって
とうとう
ぽたり
なんとかここから這い出そうと
あらん限り手を伸ばしても
握りしめるのは砂ばかりで
こっちだよこっちだよと
地底から伸びる生ぬるい手に
足首を絡めとられる
もがくたびに砂を呑み込み
喉 ....
突然窓から入って来たかと思うと
開きっぱなしの聖書を勝手にパラパラめくり
挨拶もなしに出て行った
――相変わらずだな
きっと満開のニセアカシアの間を抜けて来たのだろう
すると今頃は下の公園辺 ....