何も知らないように
素顔のままあなたは私の前を通り過ぎた
見れなかった
見ずにいられなかった
午後三時のやわらかな窓辺で
小さな小さなオレンジ色の
イヤリングがちらりと光った
二足歩行型の人間は歩く。買い物帰りの失い続ける自転車とすれ違いながら。放心する鳥たち。世界には大きなひとつの命しか存在していない。あの電車のなかから見た外の風景のなかに僕はいる。
{画像=140622083456.jpg}
*
言葉が漲っていますか
心が漲っていますか
前を見ていますか
手を握っていますか
感じていますか
感動してい ....
みんなうたわなくなった
夜も 朝も 雨の日も
すっかりあかるくなった
鼠はいなくなった
もぐらはとっくに死にたえた
人びとは 健康であった
ギターもピアノも自動で鳴らされる
楽譜 ....
小さいくせにジンジン痛む。
小さな小さな黒い点。
指に刺さった小さな刺よ。
そんなに痛まなくたって、
わかってるから。
わかってるから。
なんだか最近シクシ ....
また
銀色の肌に
しばらくこらえていた雨つぶが
金属の糸みたいに
細く流れては
消える
びしょびしょのアスファルトの
真っ黒な海に
ふたりの車も
雨つぶみたいに細く
細く
流 ....
ああ神よ どうか
四十五パーセントくらいの誤解をお与えください
少なくても三十五 三十は行き過ぎです
勝手な想像と思い込みで
悩んだり喜んだり
怒ったり主張したり
素敵な誤解を捧げあって
....
なだらかな丘を映した 湖はのどかで
ラズベリーのいばらに 縁取られた小径で夢見た
ふと目で雲を追う詩人のこころには
気の遠くなるような 循環が刻まれていただろう
自然などという言葉が ....
花のように違う価値観
些細なことに
うちひしがれて
長い帰りの電車の中でも
回復はしないまま
封をされた新しい紙袋が誇らしい
アクセサリーや化粧を落として眠ればまた新しい気持ち ....
私は知っていました
あの林檎に毒が入っていたことを。
隣国の王子様が
私を見つめていたことを。
私は知りながら食べました。
毒の入った赤い林檎を。
倒れた私に王子様が
キスをくれ ....
再び
二つに裂かれた心を癒すのは
まぼろしでないよ
嘆くでないさ
僕たちが置かれたこの場所は
再び再生するに適している
遠い宇宙は頭の上
叫び声は腹の中
足の下には冷えた墓
....
〈雨天から降ってくる雨という憂鬱〉
世界が世界一つ分狭まると雨が人々の庭に侵入してくる。
人は歩けない以上に歌が歌えない。
声は口に達する前に雨によって沈められてしまう。
電車が遠くを走ってい ....
愚癡を言ったら
妻に
「感謝が足りないから愚癡が出るのよ」
と言われた
その通りだと思う
今日も自分の弱い心との戦いだ
感謝して仕事しよう
感謝して生きよう
感謝して呼吸しよう
今日 ....
オオヨシキリは
カッコウに托卵され
自分たちの子供を殺されて
なぜ自分より体の大きいカッコウの雛を
疑わないのか
実は
オオヨシキリは
途中で気が付いているのではないかと思う
....
見上げてごらん夜の星ををききながら見上げてみる
梅雨の狭間の夜空を見上げてみる
あなたも見上げてはらっしゃらないかと、見上げてみる
*YouTube 見上げてごらん夜の ....
初秋の晴れた朝
人間の作った柵を乗り越え
甘藷の群生する土地に入って
甘味な芋を掘り出し 食っていた
と…
大きな人間が木の杖を構えて
殴りかかってくる
逃げる間などありはしない
....
駅のホームには真夏が居座っていて
人々は影を求めて黄色い線のさらに内側に行儀良く並んでいる
「貨物列車が通過します」
たくさんのコンテナを載せた電車は
風を引き連れ ....
〈Syrup16gを聴かなくなってしまった僕に〉
捨てられたカードが終わりのない落下を続ける。
捨てられたカードはまだ呼吸をやめない。
カードはもう要らないマニュアルだけあればいい。
自分を守 ....
焼き芋 焼き鳥 焼きうどん
焼いちゃう 焼いちゃう
焼き肉 焼きナス 焼きはまぐり
焼けてる 焼けてる
ヤキモチ 焼いて ふくれてる
かわいい人
焼き餅 焼けて ふ ....
ひとがいきて
ひとがしぬ
いぬもいきて
いぬもしぬ
ねこもいきて
ねこもしぬ
くまもさるも
ひつじもとりも
みんないきて
みんなしぬ
寝苦しい
東京の夜
ビルの明かりと
かなしい下水の川の唸り
すべての睡眠を放棄して
月を見上げにベランダに出たけれど
今はたてものの壁に隠れ
なにも見えない時間だった
くち ....
最も人妻が嫌うタイプのことですよね?
自分さえ良ければって人のことでしょ?
違う?在庫管理のこと?
わけわかんないですね
先っぽ入れただけで
終わっちゃう人のことじゃなくて?
コンビニの飲 ....
人々の敵意が鉄の壁のように僕を取り囲み
外側から来るどんな愛も遮断し
内側から発されるどんな愛も跳ね返してしまった長い期間
僕の中には一枚のカードが次第に凝結していった
最後の切り ....
夜眠り
朝起きる
夜がきて
あくびする
朝がきて
あくびする
いつの日も
あたりまえ
いつからか
あたりまえ
悔しくて眠れない日も
いつの間にか海の底
....
金曜日
バスを降りた途端 夜の町に穏やかな風が吹いて
夏の匂いがするねと 隣の君に僕はそう言った
長いこと僕らの町にあった 小さなスーパーは
ついにつぶされて 無意味にアパートが建つっ ....
たいせつなものが
どこかに
流れて行ってしまった
たいせつなものを
たいせつにしないで
私は
頭の中の思い出を
ただずっと探していた
私の頭の中からは
もう何も浮かんでこなか ....
ベランダにビニールシートを広げ
寝そべって星を見た
焼けた地面にぺたりとつけた背中の熱っぽさ
母親は綺麗ねとだけ言った
私は黙っていた
真暗な虚空に私は吸い込まれそうだった
小さな光の粒が ....
開けるとそこは 別世界
違う空気が流れている
無造作に 通り抜ける人影が
ドアの 向うに取り残される
影なしさんを作るドア
開けるとそこは いつもの世界
空気の流れが 感じられない
....
人間になった理由を歩きながら 空に求める応えてと
知りえない宇宙を腕で括って 流れる星のオーラ
人間になった理由を風に溶け込みながら 尋ねる胸に叩く胸は無言
知りえない彼方を眼力が泣きながら ....
空に穴が空いた
真っ黒の穴
まるで作り物の様な
ぽっかりと空いた穴
科学者はこぞってその現象を
科学的に解明しようとした
哲学者は哲学的に
宗教家は宗教的に
漫画家は漫画的に
....
1 2 3