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あなたの「詩」はたいてい
心療内科かなんかの 清潔な壁に
清潔に飾られている
そして心の弱った人達がやって来ると
そのもったいぶった毛筆で書かれた言葉で
かれらの弱った心を慰撫する
....
私があなたに恋していたとて
それはあなたには
なんの関係もないことだ
あなたが私に恋していたとて
それは私には
なんの関係もないことだ
そんな二人が
腕を組んで
無表情に
同 ....
ガッと照りつける
焼ける日光のなかに
いっぴきの蛇が
とぐろを巻いて
じぶんの尻尾を咬んでいる
徐々にかれは
尻尾から腹へと
じぷんの肉を食んでゆくが
それによって
かれが息耐え ....
地獄、極楽、ニューヨーク
いつ行く、ニューヨーク?
なんて
とある異邦の一都市のキャッチコピーを
いくら考えてみても重ねてみても
おれら貧乏人にはなんの縁もないし
まして
世界 ....
表通りの公道を
なにかに反対しているらしい
葬列のような賑わいの
長いデモ隊の列が通り過ぎたあと
裏通りの廃屋の
無人のビルディングの暗がりで
なにも反対していない少年と少女の
秘密 ....
ウチの母さんの口癖は
「ヒトに嗤われる!」で
死んだ父さんの口癖は
「馬鹿にするな!」だった
その度に俺は
「内容がないから
ヒトの目ばかり気にするんだ!」
とか
「よく馬鹿にさ ....
むかしある女の娘に
なぜ私にそんな義務が
あるのですか
と 言われた
ただデートに誘っただけなのに
イイヤそんな権利は
僕にはありません
と 答えて
僕は
下宿に帰って泣いた
シャカイやセカイ
あるいはセイジやケイザイ
などのことについて
もっと知らなくてはならない
といつも心の隅の方のさらに
横の方で思ってはいる
のだけれど
どうも
どうもそういう方面 ....
労働者はおおむね真面目に労働していたし、じぶんの与えられた作業には真剣に取り組んでいたが、しかし、責任の及ぶ範囲はそこまでで、というのも、それは当然で、最下級の働き手である彼等は、直属の上司に責任を負 ....
彼らのことを
かわいそうだと
心の中で思う青年は
センエツである
彼らのことを
社会的弱者などと
呼称するインテリゲンチャは
酷薄である
〈―名づけることは
権力ではないのか ....
ある日
おもい扉の
無言に背をむけ
行くへのない
路線バスにのって
靴をながめ
芋虫のような地下鉄と
真昼の亡霊たちの
ガランとした電車にゆられて
未来をあきらめ
だれ ....
死んで楽になりたい
なんていう言い方を
時々するひとがいるけど
死んだって楽になんかならないさ
だって
「楽」を感じる主体自体が
この世から無くなっちゃうんだから
消えてしまうんだか ....
君はそのうち泣くだろう
こらえ切れずに泣くだろう
来る日も来る日も不運か押し寄せ
対処しきれず泣くだろう
かまえても企んでも
不幸はどこからかやってくる
藪から棒に顔を出す
君の死角 ....
空は今日 気がふれている
雲がそしらぬ顔で流れていく
幼い少女が殺されたのだ と
埃まみれのテレビが言ってる
殺人者は心せよ あとになって
お前は決して反省などするな
心からの反省など ....
正直言って
おれはやつの死を
期待していないのでは
なかった
精神分裂病と
本気で戦う気のないやつに
内心イライラしていたのだ
それに
身近な者から自殺者が出るなんて
ちょっ ....
紙のうえに「私」と書くとき
その「私」は すでに
私ではない
つまり
私ではない「私」が哀れにも
詩と呼ばれる
むえきな騙りを
語りはじめるのだ
悲しいだとか
苦しいだとか
....
言おうとして
言えなかった言葉が
胃の腑のあたりにつかえて
地面が急に
ちかくなる夕べ
水中でもがくみたいに
思いのやり場が
どこにもない
ただただ凄い西日に照らされ
きみの猿のよう ....
真夜中
静寂に耳をつかまれる
今夜は 星も
月も風も犬もない
どこかの
高い塔の
窓の暗闇から ひっそりと
花びらを撒くひとがある
それは恋をするむすめ
それとも
も ....
あなたの苦しみを目の前にして
わたしは何も言うことができない
憐れみや慰めの言葉
あるいは
勇気づけの言葉さえ
そんなものがいったい何になろう
あなたの苦しみを目の前にして
わたしに ....
泣かないで
海を見ている
あなたの指先から
夜が始まる
死なないで
風に吹かれて
あなたの肩先まで
星がこぼれる
言わないで
きのうのことを
訊かないで
あしたのことは
....
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