月を食む猫がいた
銀色の毛の猫だ
私が抱きしめると
猫は風のようにするりと逃げた
その両腕は焼けただれ
甘い砂の匂いがした
長い黒髪のひとがいた
月を食む猫を抱いていた
私がその髪に触 ....
女と出会ったことがない
こんなに生きているのに
私まだ女に出会ったことがない
履歴は白紙のままで
底知れぬ充足を感じるように
女だぁと我が身を抱きしめたこともない
子の母であり
妻で ....
トン、と降り立ち
やや振り返ると
縁側に腰掛けた私は小さく笑っている
あ、その儘で
軒下で傘が鳴る音
誰か、いたのだろうか、
少女の死はあまりに退屈で ....