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{引用=ぼくの中にふたりの人間がいる!そしてぼくは不幸にも、そのどっちがどっちを打ちのめすのか、見当がついてるんだ。
 ――エヴァリスト・ガロア}
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世界の隠された扉を開け放ちそ ....
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あどけない顔の長躯の青年が扉を開けた
「アルゲブリアへようこそ」
肖像画で見馴れた下町{ルビ=シテ}の不良児がそこにいた
違うのは一糸纏わぬ背に大振りの翼をふたつ
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つけてい ....
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真理を目の当たりに見ることは危険だ死すべき人
には許されぬ業{ルビ=わざ}裸眼では目
が潰れてしまうという気高き Mont Blanc
万年氷の巓{ルビ=いただき}に散る朝日を見るよ ....
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三日続いた吹雪が上がり谷筋に三角の青い空
けものたちの暖かな匂いを捜しに行った
うずたかく吹き溜{ルビ=だ}まった雪はまだ乾い
て柔らかい今朝空から降りてきた天使の膚{ルビ=はだ}
 ....
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地に灼{ルビ=いちしろ}き椿は燃える
雨に打たれても猶お灼く
雪にうずもれて猶お灼く
涸れ枯れの遼原に椿燃ゆれば
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吹きしきる睦月の霙{ルビ=みぞれ}に逐{ルビ=お}われ避り ....
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胸にはきみの大きさの空
心に果てしない岩石の荒野
手に一把のドライフラワー
携{ルビ=たずさ}え埃だらけで歩いている
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古びてカーキ色に日焼けした風景画の人物
天地玄黄そら ....
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「心から愛する人がいたらそれがぼくなんだ」
世界の果ての向こうから小さな小さな囁き
となって伝わって来るきみの声
それはあまりにも優しすぎて残酷だ
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アイデンティティとは何だ ....
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触れられればさらさらと崩折れる
砂岩の膚{ルビ=はだ}に打ち込まれた鉄塔の高み
風が渡ってゆく 空は日を隠し 固まった沼地
に木々の揺らぐ姿が曖昧に凍結している
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一切の動き ....
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{引用=20歳で死ぬためにはあらんかぎりの勇気が必要なんだ
――エヴァリスト・ガロア}
aχ2+bχ+c=0 の解き方は初め粘土板で
ついで駱駝の背に揺られて伝えられ
aχ3+bχ2 ....
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この世界の深奥に向かって
しんしんと沈みゆく夜
遠くで花火の揚がる気配
きみの寝息はぼくの腕のなか――
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いまやフェルマーはすべて証明されたが
依然として主は姿見せ給わぬ
 ....
  .
旅立とう言葉の彼方へ
開け言葉の前への扉
目を瞑り 口を閉じよ
堆{ルビ=うずたか}く積まれたぼくら
の時代の言葉 先祖たちの
言葉の渦を踏み越えて――
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言葉の煉瓦を積 ....
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私は荒れ野を歩いていた
石ころだらけの荒れ野に路は
無いようだったが私は行く先を
見失なうことはなかった
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そして私に預言者が出会った
預言者は乞食の服をまとっていた
私 ....
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流沙{ルビ=ルサ}の流れの畔{ルビ=ほとり}にて路と路とが出会う
壘壘{ルビ=るいるい}たる碌碌たる峨峨たる崟崟{ルビ=ぎんぎん}たる
地の波浪が固結したような岩頚の列なりと
地平にまで広がる ....
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まあるい風船を同じ容積の四角い
函に押し込めそうして密封した
函をたくさん重ね隙間無く積み
重い閂を掛けた建物が目路の限り
  .
立ち並ぶ未明の波止場キリコの
少女もそこにはい ....
  .
きみの瞳の奥にはぼくがいる
ひざを抱えた小さな男の子がいる
裸で寒さに震える細い肩きみの深い
瞳の底にはまだ誰も行ったことがない
  .
きみの瞳の奥には男の子がいる
入ってはい ....
  .
うんと硬いんだ
なめると苦いんだ
目を瞑っても
まだ浮かぶんだ
  .
夢みたいなんだ
となりにいるのがきみだなんて
あり得ないと思う
きみといるのがぼくだなんて
  .
 ....
{引用=靄は掻き消え
青空覗き
風神は不安の
帯を解く。
── J.W.v.Goethe: Glueckliche Fahrt}
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きみを幾重にも縛りつけている
その帯を解いて行く ....
  .
今度こそは醒めると思ったが醒めなかった
酔っているとは思わないがきみと居た時間
の記憶が残っているあいだは昔のように生きて
いられることが分かった空気がなくなる前のように――
  . ....
   .
段ボールから抽き出して
フィルターの埃を払うと
あの土地を離れたときの
冷え切った心に火がともる
   .
できることならあかあかと
きみの顔に映える炎を
贈りたい きみの身 ....
  .
きょうは自転車には乗っていない
耳をぴんと立てて伸し歩く尻尾が揺れる
学生ブレザーを着た猫と肩を並べていると
人間の格好をしているのが恥ずかしい
  .
猫だけのことはあって歩いて ....
  .
出会わなければよかったなどと言うのは
もうよそう。ぼくの病いは深刻だ:
きみが近くにいない時には気もそぞろ
きみのまわりの空気を吸わぬと気がふさぐ
  .
きみの何でもない一言がぼ ....
  {引用=クロウタドリが飛び立つ  ――エトムント・フッセルル『論理学研究』}
  「きみは大人の思考を知りすぎている。ぼくはまだ子どもなのに」
  「きみの胸は白くて綺麗だ。ぼくの頭脳はしみだ ....
   .
さわさわゆれる
きみとゆれる
なにもかもわすれ
きみとゆれる
   .
おれたち仲わるいんだぜ
ぶつかるとゆれるんだ
もつれるとゆれるんだ
せまい座席に2センチあけて
く ....
  .
痛くされて泣きたいわけじゃないんだけど
また来てしまうきみのところへ
そしてまたきみの何でもない一言に傷ついて
また泣いて泣いたと言って叩かれて
   .
また泣いてもうきみには会 ....
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ひとはことばを作りことばはことばを生みだしことばはひとに還る。
ひとはひとを求めうでをのばしせすじをのばし爪を立てるひとはひとを求め目で誘いしがみつきかじりつくひとはひとを求め唇は唇を求め ....
    .
{引用=在上越国境嶺上観望越後而詠。}
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(長歌)
くにざかひ オキの石根{ルビ=いはね}に
なづみ立ち ふりさけ見れば
たたなづく 越後の嶺{ルビ=ね}らは
氷{ルビ ....
    .
正義はきみの中にはない。もちろんぼくの中にも。それは空にかかっているが遠くではないいつも宙を漂っているがすぐ近くにあるのだ。見ようとすればいつでも見えるのだがきみは見ようとしないなぜなら ....
   .
何度試みても詩にできないあなた
あなたには散文がふさわしい
あなたの詩のような生涯あなたの詩のすがた
それを心に描くことができない
   .
なぜならいつもあなたを探しているぼく ....
    .
あなたは出題する
あなたが謎であるかのように
あなたは謎ではなく
あなたが謎をかけているだけなのに
    .
だからぼくはあなたの出題を読む
ふりをして あなたを盗み見てい ....
    .
あなたが好きだから
この世界は耐えられる
あなたが好きと言わないから
この世界のつじつまを合わせている
    .
飛躍が無いのは知っている世界
飛翔は一度きり だからあなた ....
Giton(193)
タイトル カテゴリ Point 日付
ラショネルマン・コニュ(識られた世界)自由詩3*11/1/28 12:02
ガロア群へようこそ自由詩3*11/1/18 7:57
ガロア再び自由詩2*11/1/14 3:06
雪のち晴れ自由詩3*11/1/12 23:35
冬椿自由詩4*11/1/10 0:21
きみの空自由詩2*11/1/8 23:54
アイデンティティ自由詩3*11/1/8 23:08
結氷自由詩2*11/1/6 3:53
朝露を踏んで自由詩2*10/12/30 7:50
最終定理自由詩1*10/12/25 20:39
『旅の印象』自由詩1*10/12/16 4:33
荒れ野自由詩0*10/12/9 20:57
流沙の畔携帯写真+ ...1*10/12/6 1:31
ギイ・ド・M師に自由詩2*10/11/25 22:35
晩夏自由詩1*10/11/22 3:08
原石Ⅱ自由詩010/11/19 2:53
Glueckliche Fahrt 〔旅立つ君に〕自由詩010/11/15 1:42
赤い惑星自由詩2*10/11/7 4:15
ファンヒーター自由詩2*10/11/4 21:22
練り歩く猫自由詩2*10/11/2 3:18
Allegro appassionato ma non tr ...自由詩010/11/1 2:35
現象学的還元自由詩010/10/30 16:17
コスモス自由詩1*10/10/27 17:40
厩舎自由詩1*10/10/24 22:07
海洋生物自由詩010/10/21 3:02
国境ヨリ越後ヲ望ム(長歌并短歌,増補修正形)伝統定型各 ...010/10/19 19:29
自由詩3*10/10/19 4:17
リート風に自由詩2*10/10/7 1:29
出題自由詩7*10/9/23 21:48
紙飛行機自由詩1*10/9/23 21:21

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