自分の歩んできた人生なんてゴミみたいなものの寄せ集めだなんて思っていても、記憶の海の底に懐中電灯をかざしてみればそうとも言い切れない事に気付かされることがある。
近所にT ....
書くことは思考を連れてくるから、たちどまってはいけないのだ。
季節や天気のせいにした動かない体を冷やして、信号を入力する。
花のことから書こうと思う。
ま夏の花びらたちのこと。さえた緑の ....
「エルウッド、レイの甥のスピーディーに会う」
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次の日の朝早く、エルウッドは例のトランスの倉庫からレガシーを持ち出した。そしてアパートへ車を運転してくると、アパートの前の歩道と道路の路側 ....
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エルウッドは当てもなく、人ごみにまかれて通りを歩きながら、いろいろと考えてみた。間違いなく車は手に入ったのだし、それもピカピカの新車だ。自分の意思ではなく、神様、そして親父や、兄貴や、ブルー ....
ここ二〇日ほど勤務や家業で、休みなしに働き、体に違和感を感じていた。
朝方、今日の弁当は?と妻に聞かれた。十三日から開始した登山道・あるいはその周辺の除草作業だったが、そのきつさや膨大な作業量を ....
8月14日 AM6:00
起床。カーテン越し、自室の窓には早くも直射日光が照り付けている。網戸にしてあるからといって、別段涼しい風も入ってこない。フォーラムに ....
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倒れこんだままピクリともしないエルウッドを気の毒に思ったエリオットは語気を強めて言った。
「エルウッド様。今回の二度の引き落としが不当なものであり、不正規なものであるならば、当行といた ....
我家のせせこましい厠(INAX,2017製)で用を足しながら考えた。今まで一体どれ位のオシッコを流してきたのかと。何トン、いや何十トン?詳細は無論不明だが、まあ、それはとにかく凄いことに相違 ....
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「いらっしゃいませエルウッド様。」エルウッドの前にエリオットがかけよるとエルウッドはでかい声をはりあげて言った。
「エリオット。僕の口座から二回も無断で金が引き下ろされてる。」
「はい。」 ....
そうだ。それがぼくだった。それがぼくのまぎれもない姿だった。大岡という名のさびれた道の駅。その汚い男子便所の左手に突如として広がる絶景をぼくは忘れることができない。旅人でなくとも意表をつかれるよ ....
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銀行についたエルウッドはドアを開け放って乗り込んだね。
普通、アメリカの銀行に黒のソフト帽に黒のサングラス、黒のタイに黒スーツの上下なんか着て、いきなり乗り込んだりしたら、まず間違いなく ....
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有能なビジネスマンがみんなそうであるように、事態を呑みこんだアルバートの判断は早く、的確だった。彼はメモを取り出して、退職や失業保険の手続きなんかに必要な書類のリストを書き出すと、事務に行っ ....
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月曜の朝、エルウッドはいつもより早く起きて、三十分はやく出勤して、所長のアルバートの部屋を訪ねた。
思い切ってドアをノックすると「どうぞ」と声がしたので、エルウッドが所長室のドアを開けて ....
「千羽鶴」 作詞 横山 鼎 作曲 大島ミチル
式の終わりに際して地元の少女たちによって合唱される。悲惨で哀しい出来事を表現したこの歌は決して哀しみだけを閉じ込めて表現されてはいない。それが ....
8月9日。国民年金保険料の免除申請の仕方がわからない。それから、雇用保険の手続きに必要な事の一切がもの凄く煩わしい。最近は色々な生活処理能力が目に見えてガクンと低下してきている。大事な郵便物や書類の類 ....
イザベラの瞳は大きくて、最初に会った時から、それがとても印象的で、そこが魅力的だった。その瞳で真っすぐに見つめられると、僕は身体が透明に透けて、精神の奥底まで透けて見えるのではないかと、不安を感 ....
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結局、エルウッドとデーゥィは二時間近く、二人ともお爺さんの御伽話を聞く孫みたいにエドが話す日本の話に聞き入っていた。日本の音楽のことはもちろん、日本人の生活のこと習慣のこと、トロ、ウナギ、サ ....
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シカゴ・エキスプレスに着くと、予想通り、エドとデーウィは昼の忙しい時間帯を終えた後のコーヒー・ブレイク中だった。
「やあ、エド、デーウィ。」とエルウッドが声をかけるとカウンター越しに話をし ....
新学期が始まる前の部屋替えが始まった直後に、気が付くことになったのだけど、灯台元暗しの言葉どうりで、朝食の時、食堂でいつも会っていたイザベラが、何日も食堂に現れず、ずっと、気を揉んでいた僕だったけど ....
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次の日曜日、エルウッドは朝から手紙をしたためていた。ペンギン、キャブ、バスター、そしてバンドのメンバーにも。兄貴やレイの夢の話や、神から使わされたレガシィのことは、とりあえず伏せてはおいたが ....
イザベラは最初から、僕の外見ではなく内面を見てくれたのだと思う。要領が悪くて損ばかりしている僕の人の良いところや、外見からは分かりにくい、子供じみている傷つきやすい純粋なままの精神とか、他人には伝わ ....
君と二人で卓球室と呼ばれる閉鎖された7組の教室の掃除をした時、君は14歳で、ぼくもたぶん14歳だった。
ぼくは君のことが気になっていたね。すごく可愛かったし、頭がよかった。国語ができていつも満点 ....
イザベラとのお付き合いが始まって、一緒に散歩に行ったり、一緒に食堂でご飯を食べたり、部屋に呼んで料理をふるまったりしてみて、分かったことなのだけど、イザベラは若い日本から来た留学生の女の子たちとはち ....
世の中にはたぶん腐れ縁というものがあって、ぼくにしても、そうした抗することのできない不思議な力の命ずるままにこんにちまで生きてきたと言っても嘘ではない気がする。
ぼくには大学時代からの友 ....
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楽しいドライブではあったけど、短い時間の間にいろいろなことがあったせいか、エルウッドは結構、疲れていた。帰途に着くすがら、車が盗難にあうんじゃないかとか、イタズラされても困るなあとか、いろい ....
{引用=或いは小噺『洗顔異譚』}
「顔を洗って出直して来い!」って言われたんで
顔を洗ったら顔がとれちまってね
仕方がないからそのまんま取って返すと
....
現在まで女性から、心無い、哀しい非難を受けても、屈辱的な想いをさせられても、甘んじて受けて、大概の場合は、我慢して耐え忍んできた。
はっきり言って僕の外見には、魅力は無いと思う。髪が細くなり、そ ....
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さて、ジェイクが消えた後も、しばらくのあいだはご機嫌に初夏のシカゴの街を車でとばしていたエルウッドだけど、いつの間にか、制限速度を守って走っている自分に気がついて、思わず「俺も歳とったな」と ....
ぼくらがその時住んでいたアパートは二階建てで、二階のちょうど真ん中の部屋がぼくらの住処だった。
深夜一時半、月が白々と全てを明るく照らし出している夜の中へ、ぼくはひっそりと出ていくことにした。
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{引用=*《明科》
{ルビ山間=やまあい}にある明科という名の小さな駅から、ぼくは下りの電車に乗った。よく知っている場所のよく知らない駅だった。それは梅雨入り前のこと ....
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