話し相手もいない
岩だらけの黄色い砂漠
高名な歴史学者も
優秀な地球学者も
天才的な物理学者も
知り得ない恋の秘密を
地下水に抱かれた砂礫層の中に
とじこめて
花が空ばかり ....
雨水がさらけ出したものは
きっと未来
微量の酸に溶かされて
口には出せない罪だから
沈殿した
醜い鍾乳石
自分達の罪だか ....
ねむれないまま深まっていく月夜
こうなったら
今日と明日の境目を見極めようと
なんでもないことを
考えてつづけた
(境界のないものをそのまま受け入れられない)
(君と僕には境界があ ....
窓の外は少し北風の吹く夕暮れで
これから南極老人星を見ようと
大きなパラボラのあいだを抜けて
昔、友をなくした修行者が
涙で掘り抜いた文字があるという
岩屋のあるこだかい丘に
向かおうとし ....
旅立ちにはもってこいの日和だ
風は南南東
ロウソク工場の煙から
推測するに風速は2m
30cmより遠くへは
誰も運んじゃくれない
ひとがうらやむほど
上手に飛べるわけじゃ ....
(遠くで星のトランペットが聞こえている)
ここに至ってなぜと考えるのはあまりにも無意味だ
だからといって世間並みのセンチメンタルな風情でもない
焦がれたような焦げたような
言葉の反照でのど ....
「今年はまだ、秋の夕焼けを見ていないね」と、
閉塞前線気味の雲を見上げながら
不満げに君はつぶやく
僕は天気に関しては
何の心配もしていなかったので
うん、と生返事をすると
君は不機嫌 ....
記憶は
思い出に似ていて
にどと戻りはしないのに
私の体を小刻みにふるわせる
港町の風景が逆光の影のように
寒くてしょうがないのはきっと
季節を呪った
ブランコのせい
吹きかけ ....
はじめてこころのなかに
さいたたんぽぽのはな
かぜにからだをばらまいて
ぶんしのように
げんしのように
そりゅうしのように
たびにでるたび
かけらひろいあつめるたび
(霧がする ....
学生時代に旅した外国で
たくさん手紙を書いた
両親や兄弟や友人へ
砂漠に近い
ひどく乾燥した扇状地の街
ボロっちいホテルの一室で
二度とはき出せないような
甘い寂しさの詰まった手紙を ....
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