たきの家には昔から、大きな柘榴の木があった。
 たきなぞより、ずっと長く生きてきたのであろうその木は、もしかしたら、この家よりも古いのかもしれない。それほどの巨木であった。
 その枝にたわわ ....
ガラパゴス諸島に行かなくてはならない。
彼が生きている間に。


彼はきっと、清潔なゲージの中でキャベツを食べている。
その眼が私を映してくれる間に、私は彼に会いに行かねばならない。
聞か ....
サハラ砂漠に
たまごが一つ。
砂に埋もれて
蒸し焼きになる。

ガンジス川に
たまごが一つ。
僧侶の足に
踏まれて割れる。

冷蔵庫の中に
たまごが一つ。
中身は既に
くさっ ....
(笑)が便利なので、
この頃ひどく
多様している。

ダイエット中なの(笑)
掃除はしてるよ(笑)
彼氏が欲しいな(笑)

大体の言葉は
これでぼやけて
角が立たない。

あの ....
びょうびょうと犬が鳴くのでここいらはもう一帯冬である。
山も空も野も白いので、逆さになって落ちる童が後を絶たない。

びょうびょうと犬が鳴くのでここいらはもう一帯冬である。
雪の上に落ちた南天 ....
部屋の片隅で彼女が孤独を食んでいるとき
彼は地球に自転の方向について考えていた。
男はいつも遠くのほうばかり見ているし、
女はいつも手の届く範囲のことで忙しい。

部屋の片隅で彼女は孤独を食 ....
ひび割れたコンクリートの上で彼と彼女は

10年前からあるようなありふれた言葉で罵り合って
100年前に流したのとまったく同じ塩辛い涙を流して
1000年前から進化してない古びたやり方で許しあ ....
雨が降ると母譲りのくせ毛が四方に跳ねる。
母の巻き毛は天使のそれだが、
私のそれはケダモノの荒々しさだ。
高校のときの同級生は雨が降ると喜んで、
私の髪を触りにきた。
青毛の馬のたてがみに似 ....
失速していく雲を見ながら、
今日は失踪日和だな、と呟く。
プラスチックのストローの端を囓ると
孤独の味がした。

久し振りに読む小説の
栞の紐が色褪せた橙で
苛立たしいような
物寂しい ....
「あ」

貴方が最初に発した音が
悲鳴だったか
歓声だったか
知らないが

「あ」

貴方が最初に発した音は
今頃ちょうど
さそりのしんぞうに
突き刺さる



… ....
飛び散った
ブラックベリーの
赤い点々。

咲いて咲いて咲いて
咲きっぱなしの赤い花。

飛び散った
ブラックベリーの
赤い点々。

悲鳴みたいな
スカートのシミ。
 1時間で1万円。
 それが私の値段だ。
 更に言えば、それは私の裸体の値段で、『私』自身の価値ではない。外側だけの値段である。

 『客』に呼ばれる部屋は、ホテルであったり、自室であったりす ....
 友人よ。
 君に会わなくなって、今日でもう、どれほどの時間が流れたことだろう。
 それは、もしかしたら、一月なのかもしれないし、既に何十年も経ってしまっているのかもしれない。
 ただ一つ、確か ....
ママは本当です。
それは、私のひな菊です。
(教えたうそつきさえ)

白いスカートが似合う少女。

パパは本当です。
そして、うそつきさえ本当です。
ひな菊は私に教えました。

 ....
ママがホントは嘘つきだって
僕に教えてくれたのはデイジー。
白いスカートが似合う女の子。

パパがホントは嘘つきだって
僕に教えてくれたはデイジー。
真っ赤な頬した女の子。

デイジー ....
ベガとアルタイルの15光年の隔たりに
孤独だなんて名前をつけて
夜空を眺めてみれば
その距離は所詮
人差し指一本分で。


私と貴方の間の隔たりは
人差し指一本では足りなくて
呼ぶべ ....
片足立ちのフラミンゴは
あんなに綺麗に直立不動
両足を使って立ったって
私の世界は揺れている。

にゃあ、と泣く猫の声に誘われて
軒下を覗けば
逃げ遅れた春が
六つの目玉で睨んでくる。 ....
重たい、
 のは
くうき
 で、
      ちっぽけな
        私、
       は、多分
      ぺしゃんこに
          潰される。


 あなた、は ....
小さなライオンが路地裏で死ぬ頃
サバンナは青かった。
薄暗いゴミ箱で響く遠吠えは
誰も返さないまま
積み重なってコンクリートにヒビを作る。

 足首を
 引きずって
 口を開けるんだ
 ....
 夜、寝たくないので夜更かしをする。面白くもないテレビをつけたまま、渇いた笑い声を聞いて、インターネットで開くだけ開いて、ぼんやりとしている。日付が変わって、頭が痛くなってきたら、寝ることにしている。 ....   咀嚼音がする
  蝕まれている

芽吹く若葉が肌をつらぬき
柔らかな蕾がばらりと開く
獣は発情して山がざわつき
細胞は沸立つ水は腐敗する
空はただ高く鳥はただ遠い

  咀嚼音が ....
テントの外は暗い闇
ブランコ乗りが落ちた。
テントの外に青い月
ブランコ乗りは落ちた。

 ネットはあった。
 多分あった。
 けれどもその
 網目は広い。
 
テントの中は無人で ....
 不完全な僕たちは
 その間抜けなF音に縋って
 つま先の置き場に困っている。


(飛びたいのか逃げたいのか)
(消え去りたいのか喚きたいのか)
(縛られたいのか駆けずりたいのか)
 ....
 味噌汁や羊羹は暗がりの中で喰うのがいいと谷崎潤一郎が言っていたが、干し柿もそんな部類だろうと、邦春は思った。
 干し柿というのは、何しろ見目がよろしくない。
 硬く皺を寄せて、モノによっては白い ....
{引用=
おんなのこってなんでできてる?
おんなのこってなんでできてる?
おさとうとスパイスと
すてきななにもかも
そんなものでできてるよ


『マザー・グース』より「おとこのこってな ....
 わたしの人生は、わたしだけのものだよ、と
 真っ赤なトランクに、詰め込めるだけ、詰め込んだ
 わたし、と、わたし、と、わたし、と
 わたし、と、わたし、と、わたし、と、は
 飛行機に、積み込 ....
{引用=
山の細胞があんなにゆっくり色づいているというのに君ときたらせっかちでいけない}




 学校で図書館で自分の部屋で
 本屋でコンビニであなたの部屋で
 髪の毛の一本でも爪の ....
束の間に夢待ちわびて秋の暮

濡れるほど赤く恥らう紅葉かな

落ちるとも飛ぶとも知れず秋の蝶

迷い子の印なるべし残り柿
晩秋は山の夕暮れ
山の子どもはその頬を
真っ赤に染めて
白いふとんが敷かれるのを
待っている

 また来る朝に
 目を醒ますため
 また来る春に
 芽を咲かすため

晩秋は山の夕 ....
 地下鉄のホームはいつも妙な匂いがする。田舎育ちの美津には、あまり馴染みのなかった匂いだ。地下鉄のある街に引っ越して、もう3年がたとうとしているのに、未だ慣れない。
 地下鉄に乗るとき、いつ ....
亜樹(241)
タイトル カテゴリ Point 日付
ざくろ散文(批評 ...0*11/6/20 20:14
ガラパゴス諸島に行かなくてはならない自由詩511/3/2 20:04
たまごが一つ自由詩1111/3/1 18:56
(笑)自由詩811/2/28 0:59
びょうびょうと犬が鳴くので自由詩411/1/9 0:13
明日はこない自由詩110/11/22 22:36
ひび割れたコンクリートの上で彼と彼女は自由詩210/11/4 21:27
マスタングの鬣自由詩4*10/11/1 22:11
失踪日和自由詩210/10/29 18:31
自由詩210/10/26 21:07
悲鳴みたいな自由詩210/10/21 22:15
ウェヌスの値段散文(批評 ...210/8/18 1:42
フウイヌム散文(批評 ...510/5/25 20:12
ひな菊自由詩4*10/5/25 19:31
デイジー自由詩8*10/5/23 19:36
また会う日まで。自由詩210/5/20 18:19
さようならと見送った季節に自由詩210/5/16 16:34
浮遊感は沈没する自由詩010/5/11 22:41
遠吠えが回るまで自由詩210/4/30 22:38
割れない卵散文(批評 ...1010/4/19 0:00
春がむさぼる自由詩1*10/4/8 0:43
ブランコ乗り自由詩210/3/28 22:42
不完全な僕たちは自由詩110/3/27 0:13
干し柿の匂い散文(批評 ...310/1/15 22:28
おんなのこってなんでできてる?自由詩109/12/21 22:14
わたしの人生はわたしだけのものだよ自由詩209/12/11 20:19
今年もまた季節が終わるから自由詩409/11/27 20:27
手帳より俳句1*09/11/25 21:43
晩秋は山の夕暮れ自由詩209/11/25 21:17
『美津』のはなし散文(批評 ...109/11/2 22:21

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