咳をしてママをふりむかせたんだね目が合えばにらみ返す少年

熱の{ルビ児=こ}を抱えた母の傍らで少年は嘘の咳くりかえす

さびしがる骨をかかえて咳をすればカラッポカラッポ胸が痛いよ ....
お{ルビ義父=とう}さん、傾いています
あなたの正面で嫁はそれを見ています
長男が長女に目配せしました
長女が
ほら、呼んでいますよ
オトウサン!

お義父さん、まだ少し傾いています
 ....
大冬木細き枝より影となるむらさき凍りはじめる空に





          {引用=一九九七年一二月二六日}
自らを見ることできず我らみな二つの{ルビ眼=まなこ}湿らせてゐる

鏡面を流れ去る我この顔も明日にはきつと思ひ出せない





          {引用=一九九 ....
玄冬の砥石を濡らす太き指





          {引用=一九九五年一一月二二日}
雑踏を歩き続けて場違いなわたしは立ち止まれないでいる





          {引用=一九九五年一一月二二日}
方法はあとで考えるとして。
とりあえず部屋をかたづける
カーテンをしゃっと引き開けて
はたきをかける
そして
押入から引き出した掃除機を
唸らせて
音が
ああ忌々しい
窓からほこりが ....
 わたしはまだ眠ってはいなかった。それとも今 目覚めたところなのか。抗い難く眠い。こうして眠気に耐えているのは恐怖からだろうか。たぶん、なにか物音が鼓膜に届いたのだろう。閉じたまぶたの内側で目を凝らす .... 白鳥のくび憂鬱な長さなり





          一九九五年一二月二六日
手袋を脱げばやさしき少女の手





          一九九五年一二月二六日
意地悪を言ひたくなるの冬の薔薇





          一九九五年一二月二六日
天井をなめるおばけちゃん
昼間は天井をなめている
四角い天井をまるくなめて
部屋の中のできごとなんてなんにも見ちゃいない
おばけちゃんの舌は腫れあがって
口のなかにはおさまらないから
いつ ....
旅慣れた人の荷物は小さいという。
わたしの鞄はぱんぱんに腫れ上がって重い。
たった一人遅れてやってきた草原で一息つく。
鞄を開くと
女が入っていた。
死んだはずのわたしだった。
やっぱり死 ....
指の先からくぐります
まずは小指から
つかえてもすぐ引き返せます

引き返しまた
ためす
指輪くぐり
手は裂けているから
指、と呼んで
なぐさめたい

  ――通り抜けできません ....
雨、戸、窓、
目の、瑪瑙、脳の、舌、他、多々、下、祟る、したたる、
吐、屠、窓、啼く、咎め、泣く、とめどなく、無く、櫛、
失くし。
苦笑、故障、瀟々、
少し、晴れ、はれあがる、腫れ、
剥が ....
猫のいる家は{ルビ密=ひそ}かな契約の匂いがする
猫を飼うときには年季を言い渡すきまり
人の家に長く居すぎると
{ルビ猫又=ねこまた}になってしまうのだ
こどもらが自分の部屋を持ち
夫婦だけ ....
おもちゃをかたづけなさい!
またしてもかおりちゃんちで怒られた
かおりちゃんのおばちゃんはこわい

そしてかおりちゃんは秘密をささやく
「お母さまはほんとのお母さまじゃないの。ごめんね」
 ....
 蘭の会http://www.orchidclub.netの二月詩集http://www.hiemalis.org/~orchid/public/anthology/200302/掲載の『おまん瞑目』 ....  二年前、私は仕事を終えると毎日病院に通っていた。
 夫を車椅子にのせ、夜の病院内をさまよった。病院から出ることができないなら、せめて外気にに触れさせてあげたいと思った。
 屋上テラスの扉は鍵がか ....
 夫は足に補装具をして杖をついているので、一人で階段を昇っていると、
 「あちらにスロープがありますよ」
 と親切に声をかけてくれる人があるそうです。
 私も以前は、足の不自由な人は階段よりスロ ....
もうこれ以上失わずにすみますようにと祈るように残ったがらくたを数える一番大切なものはまだ失っていないはずとは言うものの確信はない一番大切なものはまだ失われていないのではなく残ったものの中から選ぶだけの ....  昨夜は職場の女たちが集まって慰労会をした。
 一年ぶりだった。
 家計のためにパートタイムで働く女が、自分の楽しみのために一人家を空けるのは、それがたとえ数時間のことであっても容易なことではない ....
二本の脚は胴につながっています
不潔
と言って男子の机に触れようとしない久美さんも
二本の脚がちゃんと胴につながっています
白い足首をつかみ
柔軟体操をしています

久美さんは高校生にな ....
暁の太陽は黄ににごりゐて霧の向かうにごろりころがる

死に際の蜂歩みをり無傷なる秋の薄羽を背に負ひつつ

うとまれず待たれず夕の半月よ灰紫に左欠けたる

目覚めれば降りはじめたる雨音に ....
海が錆びて波の形に針金が残るよ砂になるまで歩こう

レコードの針は静かにおろすもの 鳥のかたちが浜辺に落ちる

はじまりは記憶の記録 鋼鉄の断崖にまた刻んでは去る





益野大 ....
つば広き帽子を被り身を隠すべきところなき昼へ出でなむ

あの家もこの家も土購ひて植物の笑み養つてゐる

曇る日も洗濯物を干せること働きに出ず部屋にゐること

山盛りのカートの並ぶ特売日「あ ....
樹皮から生まれた
雨の夜に生まれ
落ちた
気がつけば土のなかにいて
根の森のなか
迷わず
根の細い方へ向かった
沈んでいった
――海も陸も底は暗い

まどろみながら
土と根とにひ ....
『まず、ないものねだりをしないこと』http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=781&from=listdoc.php%3Fcat%3D5%26from%3D ....  数ヶ月前のことになりますが、触発する批評http://takemoto.picot.ne.jp/incentive/に「ネット詩について」というスレッドがあって、それを読んだとき、「ネット詩」という ....  蘭の会 http://www.os.rim.or.jp/~orchid/ では以前、投稿された作品について毎月チャットでおしゃべりする「まな板の上にコイ!」という企画がございました。この、いまは休止 ....
渦巻二三五(67)
タイトル カテゴリ Point 日付
短歌406/12/18 10:08
居間自由詩106/12/14 9:11
大冬木短歌606/12/13 10:41
短歌206/12/13 10:36
玄冬俳句506/12/13 10:26
雑踏短歌206/12/13 10:23
それまでのあいだ自由詩106/12/13 10:09
わるい夢自由詩1*06/12/11 0:36
白鳥俳句606/12/8 22:21
手袋俳句606/12/8 22:20
冬薔薇俳句406/12/8 22:16
天井のおばけちゃん自由詩606/12/8 9:44
旅の荷物自由詩8*06/12/7 9:51
指輪くぐり自由詩506/12/6 9:50
雨の吃音自由詩2*06/12/5 10:26
閉じない猫自由詩10*06/12/4 10:10
青い目のお人形自由詩2*06/11/28 9:37
鬼女紅葉とおまん散文(批評 ...1*06/11/17 13:16
そのとき「詩」は私を救わなかった散文(批評 ...28*06/11/15 11:58
バリアフリーは簡単ではないけれど散文(批評 ...14*06/11/14 11:14
欲深い祈り未詩・独白506/11/13 9:54
女が家を留守にするとき散文(批評 ...16*06/11/9 9:37
久美さんの脚自由詩14*06/11/7 12:45
晩秋短歌303/10/24 14:13
益野大成さんの『飢餓』をよんで短歌103/10/22 13:01
短歌103/10/22 12:35
幼年自由詩3*03/9/14 20:37
「徹底的印象批評」のすすめ散文(批評 ...1403/8/21 11:09
「ネット詩」の思い出散文(批評 ...1303/8/21 10:47
出張金襴座談会おしかけまなコイ!原口昇平『純情猫詩篇』散文(批評 ...303/8/2 0:35

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