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わが家から消えてしまった冬は
ちゃんとタンスの奥の
小さな白い箱に
しまわれています。
*
少年がたいくつな授業を
受けているとき
校庭で春 ....
柔らかな
涙色をした土地に
結合する
結合する白
結合する白
限りなく
冷たくなる空
墜ちてゆく
うすいろの
うすいろの影
戸の隙間で
影が
かさりと
動く
....
かわいそうな動物だ。
真実の感情から遠ざかっても。
偽りの感情に寄り添っても。
ただ身じろぎもせず。
帰りつく先はない。
重い腰を上げ、立ち上がる。
すると地平が湾曲する。
湾曲した ....
電車が止まるたびに
ひとの泣き声がします
ここ真昼の東京駅は
けして夢を見ることをしません
うだるような夏の日
固まりになってひびく
靴の音
顔を置き忘れた
魂の音
ひとびと ....
封筒のいのちが燃やされた朝
高い樹木は舌のかたちに風に揺れ
戦争に行ったままおとうさんは
還ってきませんでした
硬いあおぞらで何かが倒れます
夢の森はいまでも神聖なままですが
月だけが ....
世田谷は砧公園のなかにある世田谷美術館で現在「瀧口修造-夢の漂流物」展が開催されています(4月10日まで・月曜休館)。昨日の深夜(今日の早朝というべきか)テレビで紹介されていたので早速観てきました。
....
ともだちと消しゴム飛ばせばおとずれる春のはじまりさなぎになる夢
遠い冬口のなかいっぱい唾を溜め蛇に吐きかけ孕んだ何か
音もなくオレンジ色に燃える雲だれかぼくに手紙をください ....
宝石は黄昏
茜色の泣き声のように
かすかな叫びが
鳴りひびく
地平線の不安に
母はにがい魂を引き裂いて
貧しい明日を燃やしている
行方不明になった死骸が
ぼんやりとたなびき
....
{引用=いくつもの山をこえ
風は現れて
少年たちのてのひらに
しみわたる
あおい糸はまぼろし
淋しきはほこらのともしび
あおい糸はまぼろし
淋しきはほこらのともしび
うたは響 ....
まどろむ秋に
おのれの肉体の結び目をほどけば
むかし知っていた誰かの指の細さを
思い出す
曇り空の表紙のなかを
遠くひとり旅する盆地には
生きるはずかしさに染まったわたしの
手のかた ....
記憶の ぬくもりが
朝のラインに 並びます
いくつかは やわらかく はじらって
いくつかは つめたく ゆるされて
それでも
濡れた空が ひらかれてしまえば
水の旗は ふかく たなびくの ....
俺の十字架のような運河が
暴風雨のなかで俺を突き抜ける
透明な脳髄の音楽は花崗岩と衝突し
恐ろしい火花を撒き散らしている
あおじろい疼きの樹木さえ
脱出する未来から吹いてくる風だ
慟哭する ....
魚の核のごとくつのるもの鳶色の街遠い野原
あざやかな稲妻のように殺す街 行き交う人みな 音の群像になり
ちっぽけな硝子のようなわれのかげ黄昏握るナイフの沈黙
水晶の祖国の ....
蛙
青葉の無限について
ひもとくうたは
いつの日か
にぶい戦争として
終わりを迎えます
それでも
雨のこと
肌にしみついて
忘れません
うれしいね
きっといつか
血は海のた ....
その頃
ぼくらといえば
美しい霜のうえを
自転車で完璧な曲線を
描きながら
ふるえる独奏者としての
ふるえるりんごの夕陽のことばを
所有してました
複雑なぼくらのようなわたしたちの
....
見えない糸でんわで結ばれていても
青い微笑がしみわたる夜ですから
ともだちだけが変わってゆきます
無声音の言葉はみちにあふれ
生きる水位が青い
少女たちの
渋谷です
原石 ....
つめたいあおぞらの岸堤では、
薄色の私に関する波紋が水面で揺れていましたが、
十四歳の虚無にとって、ひややかな書籍など、
朝と草と自転車とほたるにすぎませんでした。
森をあまく満たすぶどうは音 ....
魂の破片の場所。よいみず。茜色。きらきらと走りすぎる水。見える終わり。夢見ている憎しみのような誰か。図鑑のパリの足音。呼びかけのような眠り。舗道の祖父。曲がっている庭。静かな茶色。銀の鈴を夢見る椅子。 ....
ことばの夢の季節のような図鑑のなかで
あしたの少女たちが眠っています。
かすかなひびきがきこえます。
青い虫の名前のようにそっとゆれてることにしましょう。
きみの血ばかりつらい祖父のように
記号は書かれるまま
自然においては匂うまま立ち止まります。
無秩序の希望より隔てる韻律のほうがましです。
柔らかな性器もいくども祈れば
全世界を願う神になる ....
夕明りの文法でねむる
涙のようなガラスですから
青いコンタクトレンズ。
それをつけたぼくには
青雲のみずのような波と
月の光のようなこころで、
ノートのうらの
神経のかすかな生の魂の ....
かつて
きみの氷河を渡ったことがある、
十二月の、
空のない果てなき空。
北の地では、いまでも、
無いものは、つたわり、
有るものは、つたわらないであろう。
水辺のポストに、投函 ....
ゆっくり、透明に近づいてゆく。
ぼくらはそうやって生きてきたが、
それは多くの聖職者にとっても
共通の宿命だったのかも知れない。
ぼくらにとって神々しい《何か》が
ぼくらの感覚を奪ってゆく。 ....
きょうは
のみこむという漢字の
書き順を わすれてしまった
教室のまど《白い》雪のつらなり
(宿題をわすれたので)
水に浮くような影を
指でなぞってゆく
あしたは ....
きみがのこしたもの。なにもないこころ。
いつまでも、あかるいそら。浮遊しつづける水滴。
あめになるまえの奇跡の萌芽。静止した<とき>。
目でみようとしても、耳できこうとしても、
き ....
高い空の不純物
真白な皿
泥は南海にすむという虫なのだ
回路の途中
迷ってしまう電子のこども
こどものあなた
あなたはいつだって
もう
佇んでしまう
丁字路は
やがて折りたたまれて ....
ここのところずっと、ある詩を批評しようとして、色々考えていました。
そして考えが横にそれたというか根本的なとこまでいったというかつまり、文章を理解するとはどういうことかに関心が移ってきました。
ま ....
ここはマンションの
10階だというのに
いったいどこからやってきたのか
いつのまにか
ベランダでうずくまっていた
女の子
自分は天使なのだそうだ
仕方ないので部屋に入れてやる ....
イメージのない世界で
イメージのないわたしが
イメージのない夢をみる
ここでは光だけが目ざめている
(世界の外で
おびただしい子供たちが
黒く笑う)
....
そういえばもうすぐクリスマス
クリスマスといえば二千年前
イエス様がお生まれになった日
そんで彼は街中ひきずりまわされ
槍で突き刺され殺されちゃったんだ
その日からいやずっと前から
人 ....
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