手首を切るような人間の感情はわからない、と彼女は言った。
それは、彼女のまっとうさを端的に表わした発言だろう。
私が最も憧れて、同時に疎む、彼女の特性の一つである。
わからない、と言った彼女は、 ....
岡山県の川沿いでは
桜の花が散りきった頃から
桃源郷の様相が
徳島県の道沿いでは
人々がすっかり衣替えをすます頃
極楽浄土の景色が見える。

それらは別に
通りがかった人間の目を楽しま ....
愛なんてものはなかったので
今ここで
書くべき言葉が
ありません。

今まで私が
食べてきたものが
私の血と肉を
つくっているように
今まで私が
読んできたものが
私の心をつくっ ....
県北部の山間の畠では
正月すぎ頃から
収穫されないまま
放っておかれる
黒豆が群れる

実りすぎた黒豆は
収穫したところで
赤字にしかならない
農家は仕方なく
自ら植えた黒豆を
 ....
ありし日の浄土の園で蓮根掘り


山葡萄ボージョレヌーボォになれはせず


生るもののない畑に散る冬紅葉
キリンの首は
長くなる
高い木の葉を
食べるため

チーターの体は
しなやかさを増す
逃げるガゼルに追いつくため

私の指は
長くならない

G線の押さえるためには
シューマ ....
露草の青は空へと溶けて消え

縞猫が寝床へ運ぶイチョウの葉

阿呆鴉柿の実一つ落とし行く
3%だけ
カマンベールチーズが入っているらしい
市販のチーズが
1%も
カマンベールチーズの入っていない
市販のチーズと
同じ値段だったので
少し迷った挙句
カゴの中に入れる

3 ....
金木犀花は見えども咲くを知る

せせらぎの音にまぎれて散るもみじ

校庭の白線眩し秋の空
彼女はいつも
優しげに微笑んでいて
私はその向かいで
罪人のように俯いていた

明るい彼女を
羨みこそすれ
憧れはしなかったのは
私の感じる
辛さや悲しさを
なんでもないことのよう ....
手の内におさまるほどの椀の中赤茶けた汁を泳ぐ鯨よ

飲み込んだ林檎の行方今何処智恵も叡智も遠い我にて

さよならの響きがこだまする校舎白亜の壁は赤く染まれり



{引用=今まで自分が ....
今日降った雨が
私を殺した
大人たちは
私から
すっかり夢を剥いでから
つまらない子だねと嘲笑う
雨が降っている
冷たい雨だ
私は何ももっていない
軒下に群がる猫の群れ
冷たい金の ....
実家に帰ると
父はいつも
私にポテトサラダを薦める
それが彼の好物だから

私はマヨネーズが好きでない
それでも父が皿に盛ったポテトサラダを
一応は受け取るようにしている

それに気 ....
わたくしは
懐古主義者なので
懐中時計を買った
てのひらに
すっぽり収まる大きさで
二時の後に
六時になったりする
マイペースな銀鼠色の
愛いやつである

『浪漫主義』を
『ろま ....
携帯電話のアドレス帳に
何件登録可能かなんて知らないが
今のところ
私のケータイには
189人分入ってる

189人もいれば
もちろんもう顔もわからない
高校のときの先輩や
綺麗すっ ....
夜明けの空の色は
遠い昔に
見た標本の
大きな蝶の羽の色

{引用=赤い蝶はいないの?と
無邪気に聞いた幼子に
私は多分
嘘をついた}

白々と明ける夜に
いつかの朝へ
蝶の群 ....
缶詰のさくらんぼを食べて
その種を庭に植える私を
君が笑った
「その種は芽を出さないよ」
そう言って笑った

正しいことが好きな君は
合理主義を重んじる君は
いつだってそんなつまらない ....
真夜中に13回時計の鐘が鳴った
私はアリス
追いかけるべき白兎がいないので
仕方なく一人でお茶を飲む
すると呼んでもいないのに
引き出物のティーカップが顔を出し
喉が渇いた、と喚く
何を ....
声というのは
ふるえです
静かな水面に
小石を一つ
落としたような

円く広がる
その道のりで
小さくか細く
なりはしても
どこまでもどこまでも
同心円状に続いていく
とてもタ ....
良い国は波が攫ったあの砂が積もってできるどこか遠くに

クレパスで描いたお城に住んでいるあの日の私あのときの夢

ヒーローと悪役だけだと思ってた世の中全部白と黒だと

花の名も虫の名も全部 ....
お天気雨の降った日に
何故だか不意に思い出す
ひいばあちゃんちのお隣の
赤い鳥居のお稲荷の
神社で遊んだ
誰かしら

今頃何を
してるやら
白無垢を着て
紅をさし
どこか遠くへ
 ....
ダーナー・トゥーナーは
燕になりたい
燕になって
王子様の目玉を抉り取り
幸せを運ぶ感覚、というものを味わってみたい

ダーナー・トゥーナーは
燕になりたい
そのことを話すと
彼の両 ....
 金子みすゞの詩を読んで、女性的な優しさを感じるという人がいる。
 私は、そんな人間の気がしれない。彼女の詩のどこにそんな要素があるとかと、問い詰めたくなる。一般にみすゞの代表作とされている「わたし ....
高温の炎は
赤から青へ
青から無色に

ほら
空の端が
段々白く
なっている

きっと今頃
隣町は燃えているんだ
貰い物の口紅で
ガラスに金魚を描きました

 光の中で
 ゆらゆらと
 寂しく泳ぐ
 観賞用の
 赤い小魚

赤く染まった唇に
あなたがそっと触れるたび
思い出そうと思います
 円空は仏師ではない。寺にいた時分はあるが、あれは親のない自分を慮った坊主が、半ば無理矢理押し込んだだけだった。
 円空は仏師ではない。なので、円空が彫るものも仏像ではない。像でもない。ただの木片だ ....
ぐっしょりと汗をかいて見醒めた日
私の中身は薄くなってた

シーツへと吸い込まれた
私の中身は
悪夢のもとから
遁れられたのが
よっぽど嬉しかったのか
いくら呼びかけても
もう戻って ....
うまく呼吸ができなくなったので
洗面器に水を張り
そっと顔をつけてみた

しばらくすれば
耳の後ろのえらがひらいて
さぞかし快適な呼吸ができるだろう

そうして
顔を上げた後は
も ....
完全な中庸などないと知った日に
校舎の壁は夕日に照らされ
赤々と美しかった

{引用=あの日
誰かが言った
「さよなら」に
返事をしてしまった
僕がきっと馬鹿だったのだ}

泥に被 ....
大人は大概
子どもに無理に
ピーマンを食べさせますが
実際のところ
ピーマンの栄養価なんて
たいしたことはありません。

だというのに
子どもが美味しいと思うはずもない
緑色してひど ....
亜樹(241)
タイトル カテゴリ Point 日付
同病相哀れむもしくは散文(批評 ...9+*07/11/24 22:52
ここいらでは美味しい○○が採れます未詩・独白007/11/20 22:06
恋文未詩・独白107/11/16 0:58
バオバブ未詩・独白207/11/15 22:55
畑の冬俳句207/11/13 23:02
ダーヴィン自由詩107/11/8 22:01
秋の散歩道 弐俳句107/10/18 13:59
3%未詩・独白107/10/16 22:22
秋の散歩道俳句0*07/10/8 18:17
彼女はいつも優しげに微笑んでいた未詩・独白207/10/6 22:24
変換遊び短歌4*07/10/2 19:22
不眠症未詩・独白107/9/29 23:45
愛のある食卓自由詩107/9/29 0:25
浪漫通り自由詩307/9/28 19:20
メモリー自由詩2*07/9/25 21:02
朝の蝶自由詩207/9/25 2:15
チェリー未詩・独白2*07/9/24 0:04
13時のお茶会未詩・独白107/9/21 12:40
ふるえ自由詩207/9/20 23:58
御伽噺夢語り短歌4*07/9/20 22:12
狐の嫁入り自由詩0+07/9/20 21:33
燕になりたいダーナー・トゥーナー自由詩107/9/19 22:33
女といふもの散文(批評 ...3*07/9/19 19:51
あついひ自由詩107/9/18 17:17
ルージュの金魚自由詩207/9/17 23:03
円空散文(批評 ...0*07/9/17 16:17
寝汗自由詩207/9/17 15:39
過呼吸人魚自由詩2*07/9/15 10:23
赤い校舎にさよならと自由詩107/9/13 22:08
ピーマンの教え自由詩107/9/13 18:38

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