お嬢さん、ハンカチ落としませんでしたか

なんか懐かしいよね

それから腕時計しているくせに
いま何時?とちゃっかり左手首隠しつつ尋ねてみれば

そうねだいだいね♪

あの頃のあなた ....
ちぇっ!

右肩に強い衝撃を感じたと思ったら
見知らぬ男のひとの舌打ちが耳奥にまで突き刺さる

ちぇって言われてもね

いつもと変わらぬおっちょこちょいだから
うっかり階段踏み外して捻 ....
自分自身を型にはめようとしているのかな
知らず知らずのうちに
「ねばらない」
そんな思いに捉われてしまう

誰かにそそのかされている訳でも
強いられている訳でもないんだけどね

つまる ....
たばこのヤニで煤けたリビングの壁に一箇所
まるで雪景色を穿ったような真新しい壁紙が気になる

あのひとがわざわざ買ってきては飾っていた
贔屓にしてる野球チームのカレンダー
縦じまのユニフォー ....
誰にでも越すに越せない川がある

その川を越えようと試みるもよし
はなから越すことなど考えもせずに使い古しの釣竿一本
かの太公望になった気分で日がな一日

立ち枯れの葦原を渡る北風は冷たく ....
お母さんのこと嫌いなの?

携帯電話でのやり取りを気にされたのか
調布駅の改札抜けたところで、由紀さんが心配そうに尋ねてきた

母のことかぁ、どうなんだろうねぇ
好きとか嫌いとかそんな物差 ....
結婚しないわたしへのあてつけなのかなと思った

今更ながらの大ぶりな段ボール箱の底
つややかな赤い実りをいたわるかのようにそれは敷かれていた

一見して母の達筆を思わせる簡潔な手紙には何一つ ....
年末の気忙しさに閉経後の人生を考えてみたりする
それはあまりにも取りとめなくて
生理用品の買い置きはどうしようかとか
明日から生理用ショーツ穿かなくて済むのねとか
不幸中の幸いにして生理痛とは ....
すべてを失ったはずだった

あれから家に辿りつくまで幾度と無く転んでしまい
死装束にと亡き父に誂えてもらったリクルートスーツ着てきたのに
あちこちに鍵裂きを作ってしまった

死への船出がこ ....
マッチ売りの少女にでもなった気分で
その鍵穴を覗くのがわたしの日課となってしまった

この街へ引っ越してきた当時はタバコ屋さんだったトタン屋根の並び
ちょっとしたお屋敷風の黒塀に
その鍵穴は ....
あかぎれた手の甲は膝のうえに重ねたままで
ふぅっと深くため息をついてみる

シャッターを下ろした売店脇の柱に掲げられた時計は11時55分過ぎを指していて

どうやら今夜もフェリーは出航しない ....
ふと目を上げると向かい側には同い年くらいのひと
高尾山にでも登るのかいかにもって雰囲気で
ひと待ち顔でおしゃれなデイパックを開けたり閉めたり

わたしと言えばパン教室のお友達を待っていて
忘 ....
気付かない振りしてるだけで
わたし、とっくに気付いているんだ

夕食後の洗い物とかしている最中
わたしのバッグのなかを探っているのを

縁起良いからと買い求めたガマグチから小銭抜いたでしょ ....
冬の夜空ったら輝く星ひたすらまぶしくて

手編みのマフラーとか恥ずかしい思い出の数々

泣きながら破り捨てた一枚の写真
私の肩を抱いていた男の顔
なんて
忘れたような
未だ忘れられない ....
新宿駅連絡通路できれいなひとに呼び止められた
朗らか過ぎる白い歯並びと
しなやか過ぎる姿勢の妖しさと

「あなたがあなたらしく生きているとき人は美しい」

白い歯並びからのぞく跳ねるような ....
ジュリアーノ・ジェンマって俳優が好きだった
目深にカウボーイハット被り腰のコルトに手をやる刹那
呼ばれてもないくせしてサボテンの根元に転がる根無し蓬がわたしだった

ベッドのなかでもブーツ脱が ....
朝目覚めて口のなか乾いているのは
どうやら鼻の具合悪いかららしい
それとも流行の風邪でも引いてしまったのかな

人知れず鼾とかかいていたりして

人知れずってのはいかにも寂しいな
鼾うる ....
「秋の夜は果てしなく長いのだから」と
あなたは言って
舳先の行く手を確かめながらゆっくりと櫂をこぐ

  おとこのひとに体を許す

例え今夜がはじめてではないにしても
月明かりは艶かしく ....
あのね

とりあえず声に出してみた
答えなんかでた訳じゃ無いし
そんなものはなから無かったりする

えっとさぁ

次のことば続かなくて
それでも携帯の画面へ逃げ込むのだけはぐっと堪え ....
あなたによく似たひとだった

人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた

これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した

その ....
ここに一脚の椅子があって

それは懐かしいにおいのする木製の小さな椅子
小学校の教室にあるような椅子
揺らすとかたかた音がした

そんな椅子にあなたは腰かけている
手には一冊の詩集
マ ....
9月だってば
9月になったんだってば

それで何かが変わるってわけじゃないけど
夏の記憶には「さよなら」したし
もう後悔なんてしないと決めたのだから

秋だってば
秋になったんだってば ....
そそくさと去り行く夏の記憶を確かめようと
深緑色に澱むお堀ばたを訪れてみた

色とりどりのウエアでストレッチに余念の無い肢体は眩しく
人恋しさを見透かされてしまうようで
遠慮がちにちょっと離 ....
ガンダムってすげえよな

隣の席で男の子たちが騒いでいた

お台場に展示されている実物大のガンダムを見てきたらしく
それぞれ高揚した面持ちで身振り手振りが忙しい

ガンダムってモビルスー ....
鯵の開きってあのままの姿かたちで泳いでいるのかな
だなんて今さらながらにとぼけてみせても
私は私自身に過ぎなくて

迎え火で迎え
送り火で送る
ヒグラシの鳴く音に季節の移ろいを覚え

 ....
飼い猫と捨て猫の違いぐらい
こんな私だってわきまえているよ

あなたに甘えられなくて
ミカン箱の中で過ごした一夜

大輪の花火きれいだとあなたは言った
そんな花火になりたくて
この街へ ....
なにやら窓の外がやかましくなった
「今こそ」とか
「ともに」とか誰もが叫んでいるような

ここにしゃがみ込んで久しいし
一見自由そうで実は窮屈な姿勢にも慣れっこ

目を瞑っていれば何が起 ....
くちびるに触れるか触れないか
そんな軽妙さがおとなの分別ってやつだから
コミュニケーションの難しさとか真面目に考えてはいけないよ

古きよき時代であれば
裸足では歩けないほど灼熱の砂浜で
 ....
大きめなバッグにぶら下げた薄桃色のバッジが揺れている
ちょっと誇らしそうで
それでいてたわいもない気恥ずかしさも感じられ

膨らみかげんにチェックをいれてしまう

どれくらいのひとが知って ....
どうやら苦手なものに好かれてしまうらしい

人前で話すのはいつまでたっても苦手なままなのに
旧友の結婚式でスピーチを頼まれてみたり
不得手解消と中途半端な意気込みで卒業した英文科の呪いなのか
 ....
恋月 ぴの(553)
タイトル カテゴリ Point 日付
尋ねるひと自由詩19*10/1/25 22:44
歩めるひと自由詩15*10/1/19 19:38
縛るひと自由詩24*10/1/12 18:54
年明けのひと自由詩20*10/1/5 18:52
年越しのひと自由詩20*09/12/29 22:31
知りすぎたひと自由詩15*09/12/22 18:15
犬印のひと自由詩18*09/12/15 10:20
戯れのひと自由詩18*09/12/8 20:48
知るひと自由詩23*09/11/30 22:02
鍵穴のひと自由詩21+*09/11/24 17:34
フェリー乗り場のひと自由詩18*09/11/17 18:24
あかねいろのひと自由詩19*09/11/10 20:12
抜くひと自由詩39*09/11/3 18:41
冬の夜空ったら自由詩21*09/10/26 22:05
ニベアなひと自由詩20*09/10/19 22:23
ジェンマなひと自由詩31*09/10/13 20:29
すがるひと自由詩27*09/10/6 16:39
めぐり会うひと自由詩19*09/9/28 22:28
気付かされたひと自由詩22*09/9/22 22:57
流れるひと自由詩27*09/9/15 9:13
ラヴなひと自由詩34*09/9/8 20:21
めぐるひと自由詩21*09/8/31 21:19
円環のひと自由詩20*09/8/25 18:12
ガンダムなひと自由詩33*09/8/17 20:23
覆水のひと自由詩24*09/8/10 20:26
見つめるひと自由詩23*09/8/3 20:35
線上のひと自由詩20*09/7/28 20:10
suicaなひと自由詩26*09/7/21 10:10
さするひと自由詩16*09/7/13 23:31
好かれるひと自由詩30*09/7/7 18:53

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