{引用=*}
イメージの蕾の中にわたしはいた
わたしはわたしの真実をゆっくりと展開させていった
孔雀の眼差しを持つ蝶があなたの目蓋から飛び去った
わたしはなおもあなたのイメージの中にいたことだ ....
夜の死顔は隠匿される
太陽による窒息死
視覚の分厚い曖昧に覆われて
悪夢の下着を脱いだ獣の顎骨から
乱立するギヤマンの伽藍
涸れた河床を磨かれた顔たちが遡上を始める頃
剥離した脱落者は紐で ....
{引用=声の肖像}
どこかで子どもの声がする
鈴を付けた猫がするような
屈託のないわがままで
なにもねだらず行ってしまう

風がすまして差し出した
果実は掌で綿毛に変わる
ぱっと散った ....
寒さがやさしく悪さして
濃い霧がおおっていた

蜂のくびれにも似た時の斜交い
あの見えざる空ろへ
生は 一連の真砂のきらめきか

四つの季節ではなく
四つの変貌の頂きを有する女神の
 ....
{引用=破産者の口笛}
あなたのうなじの足跡
夢からずっとついて来て
真昼に座礁した
摩耗してゆく面差しの焔

古びた空想科学
瞑る金属片の美しさ
叶わないで狂うわたし
鏡の海に爛熟 ....
{引用=習作たちによる野辺送り}
鏡の森から匂うもの
一生を天秤にのせて
つり合うだけの一瞬
混じり合い響き合う
ただ一行の葬列のため

 *

軒の影は広く敷かれ
植込みの小菊は ....
休日は地獄耳
落下する電車の静けさ
天井からぶら下がっている
こめかみの光 カミキリの声
傾斜し続ける 声の影
ぶどう酒色に濁った季節
腕をひねり上げる
  自由――自己への暴力

 ....
{引用=胡桃の中身}
感覚と本能の間
奇妙な衣装で寸劇を繰り返す二人
台詞を当てるのは
土台無理なのだ
虎はいつだって喰いたい
馬はいつだって逃げたい
やがて波打ち際
血まみれの馬は海 ....
{引用=換気}
現実は醒めない夢
一生いぶかしみ
出口を模索する
後ろで窓が開く
気配だけが淡く恋





{引用=かくれんぼ}
風もないのにブランコが揺れた
瞳の奥の赤錆 ....
持て余すではなく弄ぶ
徒然に
  雨垂れの独白を
聞き入るでもなく聞き流し
滴る血の鯨肉
  アメリカの小説を想う


コロナという病が流行り出したころ
あおりを食ってコロナビールが ....
{引用=うたごえ・一}
空気の花びらが散って
時折ほこりが舞うように
手をふって消える光の棘



{引用=うたごえ・二}
その肉体は一本の弦だ
わななきながらさまよって
わたしの ....
巨人の頭蓋の内側で
天井画を描き続けている
孤独なロウソクのゆらめき
舌の閃き いのちの虚飾

わたしたちは互いの羞恥をめくり合った
どの顔も黒焦げのまま燃え残りくすぶり続け
追慕は灰の ....
{引用=犬も食わぬ だとしても ただ己の生前供養として
またも雑多な感傷を一つの籠に盛り合わせてみる
秋を想わざるを得ない日 繰り返される儀式として}


{引用=ひとつの面差し}
睦まじ ....
{引用=忍路・蘭島}
翡翠と書いてカワセミと読む
そんな宝石が飛び去る刹那の後姿を
有難い気持ちで見送った

3500年前の環状列石は
見かけも手触りもありふれた石
そりゃあそうだろう
 ....
泣きぬらしたガラス
とり乱す樹木
細く引きよせて
下着の中へ誘いこむ
風とむつみ合い
あお向けに沈んでゆく
せせらぎも微かな
時の河底
陰影に食まれながら


缶ビールを開けて
 ....
{引用=土に還らず}
木洩れ日のゆりかごに
干乾びた夢ひとつ
蟻に運ばれることもなく
ペン先でつついても
カサコソ鳴るだけの

蝉よりも見劣りする
透けた単純構造から
ふと零れる輝き ....
{引用=夕涼み}
薄暗がりがそっと首を絞め
あなたは鬼灯を見た
決して強くはない抱擁で
皮膚一枚を越えられず
互いの頬に帰依するように
自分の愛と思える部位を自分で弄って
記憶に補正され ....
{引用=涼を狩る}
池の青さ
  屏風と扇子

ボタンを外した
   指は行方知れず

アオダイショウ
   そっと跨いで 


墓地へと続く
   坂の木陰

吸った唇
 ....
記憶の黒点だった
太陽の鏡の目蓋の中で
ある者は熱に歪み
ある者は乾いて燃え上り
誰もが己の影に憩いを求めては
その微かな流れの干上がる時を待っていた
わたしは 光を青く投げ返す黒蝶が
 ....
{引用=飾り物}
沢山の飾り物を付けて
自分がひとつの飾り物のように
時代の吊革にぶら下がっていた
円環するはずの路線が
少しずつ内へと傾いて
渦を巻き やがて
凝り固まった闇
終着点 ....
{引用=墓地と少女と蝶と}
墓地を巡って柵を越え
黄色い蝶が迷い込んだ
少女の額にそっと
押し当てられる口形
珠になってこぼれて落ちた
奏できれない音色のしみ

{引用=*}
夏の墓 ....
{引用=追憶儀礼}
二人の時間はまだらに溶けて
いることすらも忘れてしまう
美しい他者 異なる種族
愛はアルビノ ひそやかな野性





{引用=お茶碗欠いたの}
月は隠れてR ....
{引用=晴天なり}
このまま空に溶けたいね
うた声みたいにさ
エビスの空き缶ひとつ残して






{引用=火を盗るもの}
日向のアスファルト
黒い毛皮のケムシが駆ける
機 ....
{引用=前戯なし}
あなたの輪郭はとぎれとぎれ
知っていることは数えられ
知らないことは無限大
ところどころはっきりしても
ひとりのあなたが不鮮明
印象だけが白く火傷して
わたしをジャン ....
夢見る魂が裂果する夏が来る前におまえはおまえの首を咬む
鬱蒼とした緑から忍び寄る脚韻の多い名も知れぬ虫たちが
肉体の時計の固い門に射精すると逆回転でさえずる鳥がいた
首の長い古代の母が組み上げら ....
{引用=二人の旅行}
迷い込んだ蝶が鍵盤にとまった
ゆっくり開いて
ゆっくり閉じて
あなたは水へと変わり
音楽は彫像となって影を落とす
わたしは感覚と記憶
去るものと共に流れていった
 ....
{引用=微風}
うすくなった髪をそっと撫で
朝の風は水色の羽ばたき
幼い接吻
この目が見えなくなっても
耳の底が抜け
全ての言葉が虚しく素通りし
鳥の声すら忘れてしまっても
変わらずに ....
{引用=少女アデリーの失くした人形のために}
暑い日にはアスファルトに足をとられてしまう
あえぐ憐れなペンギン
目標を喪失した花鋏
放置されたまま錆びて行く殺意
間の抜けた 横顔の
驚きで ....
{引用=どうしようもないこと}
絶望を綴ることに何の意味があろう
だが綴ることで絶望は虚構に変わり
また綴ることで希望すら捏造し得るのだ
詩は演劇性を持つ  
演劇は祭儀であり呪術である
 ....
猫のように見上げる
空のまだらを
鳥に擬態した
ひとつの叫びが
紙のように顔もなく
虚空をかきむしる

骨の海から引き揚げた
もつれた糸のかたまりを
自分の鼓膜にしか響かない声を持つ ....
ただのみきや(865)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
卵から始まるはな詩文書グループ15/6/13
投稿作品
都度流失するものたち自由詩121/12/5 13:39
素体回帰自由詩2*21/12/1 18:21
演者たち――眼差しの接吻自由詩6*21/11/20 17:36
いのちの湿度自由詩8*21/11/13 13:46
ひなびた温泉宿で芸者の幽霊と興じる真夜中の野球拳あとひと息あ ...自由詩4*21/11/6 23:27
知らずにもとめて自由詩8*21/10/31 13:12
指さす先になにもない自由詩2*21/10/23 16:27
なんじゃらほい自由詩4*21/10/16 15:11
頭痛の種をつまみにして自由詩4*21/10/10 12:31
徒然に散文的詠歎を自由詩3*21/10/3 13:48
詩の歌声自由詩4*21/9/26 13:11
最初から灰だった書物へのオマージュ自由詩3*21/9/19 14:03
傷んだ果実の盛り合わせ自由詩3*21/9/11 12:46
玉手箱自由詩6*21/9/4 14:39
ユーラシアの埃壜自由詩3*21/8/28 13:15
化生の夏自由詩4*21/8/23 22:44
跋扈ちゃん自由詩5*21/8/14 15:51
オリンピックとコロナとわたし自由詩3*21/8/8 16:24
おまえがアーメンとは言えないものを自由詩4*21/8/1 15:09
もがきながら側溝の闇に消えた揚羽蝶のために自由詩4*21/7/24 12:16
越境者自由詩4*21/7/18 14:49
憑きものばんざい自由詩5*21/7/10 15:18
置き土産爆ぜる自由詩2*21/7/3 18:35
雑居ビルの一室で自由詩1*21/6/26 22:21
羽衣呪術自由詩3*21/6/20 13:32
生前供養自由詩9*21/6/19 16:24
微風・反転・漏出自由詩4*21/6/12 15:54
嵐と晴天自由詩6*21/6/6 13:56
死作――詩に至る病としての自由詩4*21/5/30 15:43
安息日に詩を書くことは許されるか自由詩10*21/5/22 13:52

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