わたしがここで話すのは、木の実をたべ、透明の毛をもち、草にねむるつめたいくまたちのことだ。街に降りた熊たちの、(淋しい淋しい)という餓えた声に今日も胸をいためているくまたちのことだ。
たしかに秋 ....
きみが笑うと
砂糖工場が爆発する
蝶蝶は交尾をはじめて
ポットからコーヒーが溢れだす
体の一番外がわのところで
気持が逆流する
きみが笑うと
わたしは爆発する
うすっぺらい昼間がめくれ ....
さむいので
愛をほどいて
ぼくたちは
薄い布を織った
できるだけ大きくつくろうね
と
きみが笑ったら
見えている全部のものが
ちかちかひかった
できるだけ
できるだけた ....
わたしたちがfeedされているうちに
すべての季節が終わり
逆剥けの夜がやってきた
両面が【YES】のカード
何もやっていない、とあなたは言う
千切れても千切れてもなお揚羽蝶
鳥よりも風よりも高く飛べ蝶蝶
羽のない蝶のつもりで月曜日
爪切りを持つ手にふと影蝶の影
心だけ蝶に孵って死ぬ蛹
蝶々のみるゆめはいつも ....
ここまでと決めた傍から積もる指
濡れながら光っているのは虫の闇
躊躇いを束ねてなお軽い我が身
あー、ねえ、いくつもの川を渡った。昼間にも、夜中にも、明けがたにも。きみの50歩が、僕の42歩。少しずつ齧るようにして日々。こんなのはもうさんざん使いまわされて流行おくれだってわかってても跳びあが ....
雨降り 夕暮れを巻いて
物語を待っていた
バスが来て 人を降ろし
タクシーが来て 人を乗せて行った
日々は車窓みたくぼんやりで
右から左へ流れていった
むすめに 毎日 頬擦りを ....
吃音の恋人の鳴き声は
滞る渦の中のガラス片
あるいは雨の日の蝶の瞬き
細かく光りながら吸い込まれていく
恋人 君の縺れを
優しい泥のように愛している
むすめが、ドアを開けて出ていく。あっけないくらい簡単に。あんなに気を揉んだのがばからしくなるくらい軽やかに。
でも思えばそうだった、わたしもいくつものドアを通過した。痛かったけど気にしなかった、 ....
日々朦朧 生きてるだけで減る体
木漏れ日 喜び 泥沼の夢
美しい詩を書くひとの心が正しいとは限らない
というのとおなじで
心地よい詩が美味しいと決まってはいない
げんにいま 目のまえに浮かぶ
濁った渦の色をした短い詩は
蒸したてのパンよりも熱く ....
泥濘を剥き出しで行く恋心 跳ねて乾いた汚点は紫
夏を通り越すとき、むすめの背が伸びる。目線がもうほとんど同じになった。靴のサイズも。手のひらはまだわずかにわたしのほうが大きい。平板だった身体は迷いながら造形されていく粘土細工のように、昨日よりも ....
焼けついたあなたの跡を拭う昼
眩しすぎてて蝶も飛ばない
まどろみのなかでみたのは開いた手 誰もいない部屋 飛ばない蝶々
繁る胸の奥にあるはずの
幸福に触れたいのに
苦痛ばかりが繰り返し適用される
見覚えのある棘を啄んで
小鳥たちが泣いている
肌の裏側で音が重なる時
それは優しい音楽になった
それでもまだ罰が必要だと思っている。動けない、歩けない過去の手足のために、どれだけ細い鞭を振えばいいだろう。開いた目に映らない現実・事実の流れていく速度に。
意味・明日や、ままならない思考の取り出し ....
ぬるま湯の夢を見ている午後の庭わたしに触って愛とか言ってよ
嘘だからどこまでも行ける私達、アイスクリームより溶けたね
瓶詰のため息を飾る輝いて直視できない君の窓辺に
東京駅で(またもや)ぶつかりクソじじいにぶつかられて有楽町の駅まで吹っ飛んばされてる間にわたしの頭のなかに浮かんだのは(いまだに詩なんて書いてるからだよ)それから(有楽町でぶつかられたことはないな ....
おもいでを忘れるために生きている
淋しい でももう 成す術も無い
体じゅう咲いて咲いて忘れていく
淋しい でももう すぐ忘れていく
きったねぇ街だな、と、ふるちゃんはこの街のことを言う。そのくせ60年近くもずっとここに住んで、花を活けている。(途中、阿佐ヶ谷だの芦屋だのニューヨークだのに行ったらしい、そのどこでも花を活けていた ....
きみが泣くなら
わるいのは世界だよ
撫でてあげる
でもきみは来ない
涙だらけで走っていく
世界がみるみるうちに濡れてひかっていく
話していて、それは子宮のなかだと気づいた。天井も壁も床も布張りの、ふかふかに熱い布だらけの狭い部屋、いつもはなかなか入れない部屋のそのまた先にある、小さな扉の奥にある部屋、特別な木のなかに入るよう ....
わたしは、この世界のことがあんまりすきじゃなかった。(美しいと思ってはいたけど)。それだし、世界のほうもわたしのことあんまり好きじゃないだろうなって気がしてた。こちらを向いてくれないし、照らしてくれな ....
きみの歩いたところが波打ちぎわになる
愛している
と言ったところで
流されていく
だから何度でも言える
よろこびも、憎しみも
塩辛く濡れて消えて行ってしまう
喜びをはこぶ梔子の白さよ
朽ちていく程濃くなる香り
ダリアダリア気まぐれな愛をねだれば咲かないダリア愛してる
その間際 巻きつく先は甘い束縛
鉄線が咲き、散り、また咲き
紫陽 ....
ベビー・熱い・ナッツ・ケーキ
世界に絶えず注がれる言葉
これがつまり愛だとして(あるいは愛でなかったとして)
一体何が変わるだろう?
保健室・子宮・明かるい部屋、
こまかい穴の底にあ ....
行ったり来たりする。診察室(2番)、医者は、清潔そうな上着をきて、どうですか、という。カウンセリングではうまく話せていますか?はい、いいえ、どうだろう、大丈夫だと思います。でも眠れません、強張って ....
蜜でびしょびしょのパンケーキ。
明るい白いお皿。
切り分けられる直前の幸福。
あなたの精神には美しい余白があって、
私たちはよくそこで落ち合った。
夕暮れどき、影になっていく街を ....
私の
描かれた
無尽蔵の紐
束ねられ
仕分けられ
舫われた
やがて溶けゆく砂糖粒
滑稽な意味の羅列など
この絵を踏んでゆけ、と命じる
無責任な人々の手を汚して眠る
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
0.35sec.