満ち足りて
何も言いたいことがない日
わたしは
使われなかった切符になっていた

古いけれど新しくて
行きたかったけれど行けなかった
そんな後悔さえも通り過ぎて
紙きれのように たいら ....
高をくくった夏の日に
足を踏み入れたせいなのか
明日を見切った冬の日に
足を踏みはずしたせいなのか
頭の中だけが そしらぬまま
音はかえってゆきます


時の栞はありませんでした
指 ....
女だって人の尻を見る
女だからこそ
そらさずに見る

人が尻から生まれること
女は少女の頃から知っている
男は父となる日まで
疑っている

つねってやろうか
数ある刃物の中でも一番の迫力をもつ
刃物界の大御所といえば
包丁氏である
おいしい料理で人を魅了するかと思えば
殺人事件までひきおこす
まことに波乱万丈な人生


そんな包丁氏が今熱を ....
朝のような
首すじだから
遠くから見つめている

階段をのぼっているだけなのに
人生だ なんて言っていいのか

自由と自由の間に
履物をそろえる

わたしを取り去った世界とは
ど ....
君の影は鉛筆だった
色はコバルトだった

窓ギリギリのところで
キリギリスみたいに
君の長い足を見ていた

教室の外
足音が聞こえるたびに
叱られた子供になって
君が振り返るたびに ....
さかなは 心を どこで切っても さかな
わたしは 心を どこで切っても わたし
ではない気がする


でも
あさっての海や あなたの海から見ると
それは くやしいくらいに 全部わたし ....
ふと
ほほえみの切れはしを
思い出す

靴紐を結ぶ時
信号待ちで雨を見ている時


紙コップでよかったのかもしれない
少なくとも
割れることはなかったのだから

けれども
け ....
失敗だらけの日常を
遠いところから見ると
私は大地や雲になる

弱さや渦巻きも見えない
遠いところから見ると
私は名前の知らない星になる
名前のつかない闇になる

どんなものにも ....
ニコニコした悪に
ウィンクして
お茶をいれて
一緒に飲んで
たわいもない話をして
電車に揺られて家に着き
お風呂に入って
眠る前
今日の日記を書き始めたが
あと一行が足りなくて
の ....
押入れにすわっていると
何も入れたくなくなる

だいじなもの
だいじなひと
すべてはもっていけない
しあわせがある
トイレに残ったペーパーを
見送る


おわりも
はじまりも
 ....
しずかな朝のようなひとから
手紙をもらうと
こころが朝つゆで
いっぱいになって
また
太陽の方を向いて
実をつけようと
たくさん思う

ひとの手先をよく見て
おぼえたい
ひとのし ....
手荷物で運ばれなかった身体が
ひょろり空港におり立った
無言でおじぎを交わしたのだが
たぶんお互い
うぶなんじゃないか
汗ばんだ呼吸が
肌を濡らしあう

寡黙は夜のようにかきまわし
 ....
おじさんが木にとまっている
電車に揺られて

散歩ではなく
捨てられなかったものへ戻る道だから
みんな
しずかにね

うすよごれた体液が入ったポットを
持ち帰るのね
まいにちまいに ....
雲をみじん切りにして
さっと炒めて
ちょっと味見して
少し首をかしげて

そこからひたすら炒める
ひたすら


かなしみにも
あかるい工夫がみられる空は
わたしの夕焼け

 ....
1、
夜は
君をこわがらせないように
ゆっくりと夜になっていく

君は
君をこわがらせないように
ゆっくりと老いていく


2、
しろいくもに
しろいペンキがついている
 ....
木が勢いよく枝をひろげ
葉がさらさらと風にそよいでいる

ココがわたしの入口です


日に焼けた古本の匂いが
若き父のひたむきさをつれてくる

ココがわたしの入口です


決し ....
食卓の
醤油のように
泣いていた
女が一人
わたしの部屋で


醤油には
白いお塩が
入ってる 黄色い豆も
言い訳しないで


美しく
一升瓶を
抱えてた
彼女はお酒
 ....
君のまじめさを
遠くから見て
ぼくは何度も
水の下書きをした

雨の展覧会
氷じゃない光
具現化できない温度
ひとを生むために
まっしろにしていたひとの
あたたかさのようなもの
 ....
ぼろ布になるまで
生ききった
捨てる直前の美しさを
君は生まれながらに宿している

茶碗をふくように
涙をふいて
箸をもつように
骨をもって

君は
青年の目のような黒で
さよ ....
群青のカケラを
金のひらめきで
刺繍する夜
アラビア文字みたいな冒険を
してみないか

飛行機の窓を開けると
飛んでいくよ
君と君をおおっていた
包み紙が

君はどんどん
小さ ....
指は使い込まれ
はしたなさが薄れていく

こっくりとだまった目
ほほ

組んで指して入れて
未完成を目覚めさせていく

指で音をきき
指で湿りを嗅ぐ
脳にじらした虫歯を出前したい ....
朝のような
首すじだから
遠くから見つめている

階段をのぼっているだけなのに
人生だ なんて言っていいのか

自由と自由の間に
履物をそろえる

わたしを取り去った世界とは
ど ....
誰かが耳を澄ましているから
夜は静かなのでしょう
全身で聞いているから
夜は暗闇なのでしょう

街がしっかり消えてから

目を洗うふりをして
しばらく
目を泣かせた

きまじめだ ....
あなたが
黄色く話していると
楽しくさせますね

でも
黄色ばかりだと
かなしくさせますね

カナリヤ、ハンカチ、スマイル、

あなたが
胸にもっている黄色
黄色の水たまり
 ....
起きたてよりも
身体を少し動かした時に
命が整うように思う

偶然開いたページに
誠実に伸びている轍を見つけると
命が整うように思う

なんでもない日
みそ汁をのんでいると
命が整 ....
カレーの中に牛はいた

5分後、私の中に牛はいる

結局牛はどこへ行くのか
共に私の中で生きていくのか

記号未満に成り果てた牛が
言葉へと向かわせる不思議
しかし
死んでいるので ....
いちごの心臓を食べる
ぐじゅぐじゅするね

いつも足りないのは
心臓より命の方が多いからか
誰かが謝ったりする

いちごってかわいいね
人の頭部みたいで
吊られて風に揺られて

 ....
息白くずっと頭を下げている
あなたのハゲは私がつくった


海水で血液製造するために
従業員を急ぎで募集


タコの血は青いんだって静かだな
たかが生理にいつもドッキリ


牛 ....
ありふれたおはなしが
ささやかに座っています

テーブルの上
紅茶が入ったカップの横

読みかけのおはなしは
トコトコ歩きます
誰かの声をとおって
誰かの頭の中へ
沈黙を守って
 ....
昼寝ヒルズ(45)
タイトル カテゴリ Point 日付
満ち足りて何も言いたいことがない日自由詩324/4/16 21:40
練習曲自由詩424/4/13 9:23
女と尻自由詩123/12/7 16:01
刃物物語自由詩123/4/18 10:24
首すじ自由詩519/7/25 17:23
コバルト鉛筆自由詩319/6/19 16:58
釣られた魚自由詩418/3/29 17:52
けれども自由詩215/10/29 12:57
とけてゆく自由詩415/10/27 17:41
ウィンク自由詩015/10/26 16:36
引越しと帰り道自由詩612/9/20 14:40
朝つゆ自由詩111/9/1 9:12
手荷物自由詩411/5/23 11:12
ポット自由詩311/3/10 12:38
わたしの夕焼け自由詩510/11/15 15:58
時間栽培自由詩610/9/16 11:37
空は音符の匂い自由詩6*10/9/15 19:05
醤油短歌710/6/23 12:21
水の下書き自由詩410/6/21 15:50
青年の目のような黒自由詩410/6/18 20:56
刺繍する夜自由詩210/5/31 15:15
問い自由詩5*10/2/26 22:44
首すじ自由詩1310/2/9 9:22
静かな夜自由詩810/1/30 1:01
黄色自由詩610/1/26 21:01
みそ汁自由詩710/1/25 14:52
自由詩310/1/22 22:37
いちご狩り自由詩409/12/1 9:36
下旬短歌309/11/27 12:50
おはなし。自由詩609/11/24 12:00

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