〇 {ルビ御豆腐=おかべ}なぞ炊かしやりますな風花や
〇 {ルビ猿曳=さるひき}の連れたるははて猿なりや
〇 {ルビ桂女=かつらめ}の鮎{ルビ賣=う}る{ルビ桶=をけ}の水に{ルビ冩=うつ}る{ルビ月讀=かつらをとこ}の影や{ルビ靜=しづ}けき
全ての{ルビ窗=まど}は{ルビ鼠色=ねずみいろ}の{ルビ窗掛=カアテン}で覆はれてゐた。
曇天よりも{ルビ猶薄昏=なほうすぐら}く曖昧模糊とした西洋料理屋の店内。
今から思へば、僕と{ルビ妻 ....
{ルビ妻=さい}と二人で買物に出たのだが、{ルビ目當=めあて}の物が一向に{ルビ見附=みつか}らず、仕方無しに戻つて來た。
どうにも殘念に思はれたが、今日は{ルビ祝事=いはひごと}の日なればとて ....
狛犬の足下には
{ルビ數日來=すじつらい}
僕が供へた御賽錢が{ルビ其儘=そのまま}光つてゐる
坂を上ると
今日は
彼方に遙か富士の白峰が覗いてゐる
....
鯛を釣らんと埀してみたが雜魚も寄らいでまたばうず
下手の橫好きはうぐわんびいき足すの印に雜魚の引き
枝一杯に金木犀の花粒
長雨
香りを堪能する閒もなく――
降りつづく雨
雨粒はひとつひとつ
幽かな鼠色を抱へる
粒は
....
昨日の金曜日、一日休みを貰った。
朝七時頃、{ルビ妻=さい}と一緒に家を出て、まずは近所にある馴染みの鎮守に詣でた。
少し石段を上ると鳥居のやや手前で、弘化年間に作られた、僕らより随分と年嵩 ....
窗の外
そほふるあめ 小糠雨
軒深ければ硝子に水は凝りません
テエブルには象牙の小筐
ひいさまのくだされもの
蓋を開けると 曼陀羅華の實
四つに裂けた口 ....
〇 月草の靑き{ルビ蝶=ひゝる}の{ルビ群咲=むらさ}くを{ルビ妻=め}と辿る{ルビ逕=みち}人にも逢はなく
〇 {ルビ象=きさ}の仔のやはらに伸ぶるはな先に{ルビ觸=ふ}るゝ靑かも ....
{引用=
【長歌】
}
{ルビ曉=あかとき}ゆ {ルビ朝=あした}を待ちて {ルビ家=や}を{ルビ出=いで}て 丘に{ルビ上=のぼ}りて
{ルビ遠近=をちこち}を {ルビ覓索=まぎ ....
〇 百千の{ルビ舟蟲=ふなむし}{ルビ趨=はし}る{ルビ水明=みづあかり}
〇 {ルビ空蟬=うつせみ}や{ルビ傍=かたへ}に{ルビ郁子=むべ}の{ルビ靑膨=あをぶく}れ
〇 ....
〇 鳥の{ルビ糞=くそ}{ルビ枕=ま}ける涅槃や蟬骸
〇 颶風逸る征伐すべき夷狄とや
〇 敗戰忌ステレオタイプのパシフィスト
{ルビ霽=は}れ
{ルビ壯=さか}んな{ルビ熅=いき}れを充溢させ
富士を{ルビ覓=ま}げば
その方角に雲が堆積し
否
{ルビ而已=のみ} を 投げつける
丘を下り 日蔭
....
ふたりぽつちの寂しさは
Agarの殻に{ルビ隱=こも}ります
じくじく滲む怠け汁
{ルビ互替=かたみがは}りに{ルビ傳染=うつ}ります
そろそろ死んでも{ルビ可=よ}いけれ ....
〇 木漏日や{ルビ耳鳴=じめい}を{ルビ埋=うづ}め蟬時雨
〇 題目を愚直に繼ぎて原爆忌
〇 熱帶夜{ルビ耳底=じてい}に{ルビ著=しる}き闇の息
霞んだ空の向かうから風がやつてくる
{ルビ私=わたくし}に向かつて
{ルビ颯々=さつさつ}と{ルビ來=きた}り
今しもぶつかり
tremoloのやうに私を震はせる
その振動ごとに ....
梅雨 の 晴間
ヤコブ の 陛
耳石がパラパラと舞っている
パラパラと耳石が舞っている
人々にも眩暈が感染している
....
〇 黑猫のやけに黄なる{ルビ眸=め}明けぬ{ルビ黴雨=つゆ}
〇 {ルビ黑南風=くろはえ}や猫は首のみ藪に{ルビ插=さ}す
〇 との曇り{ルビ蟬聲=せんせい}遠く汽車は來ず ....
{引用=【長歌】
流さえぬる{ルビ稚兒=ちご}の{ルビ泊=とまり}に{ルビ水漬=みづ}くを悼み詠める歌
}
雨去りて 鎭まる{ルビ朝=あした} いと{ルビ柔=にこ}く 日も照り射せば ....
{引用=
【長歌】}
久方の光差入り苦き夢斷たえて目覺む
しらしらと窓{ルビ明=あか}らめば鶯の聲も訪なふ
傍らに{ルビ枕=ま}ける{ルビ吾妻=あづま}は寐息にも{ルビ安眠=やすい ....
〇 {ルビ磯鶫=いそつぐみ}な{ルビ獲=と}りそ獲りそ{ルビ憫=めぐ}しとそなどて{ルビ偲=しの}はぬ{ルビ燕=つばくらめ}の子
〇 何やらん滅却{ルビ徴=きざ}し{ルビ水鷄=くひな}叩く
〇 {ルビ黴雨=つゆ}の川淸濁呑んで{ルビ濁滾=だくたぎ}つ
〇 {ルビ黴雨霽=つゆばれ}や{ルビ草木=さうもく}國土泥 ....
――天火の扉ががちんと閉ぢる
何やら無闇に汗が出る
鄙びた踵からくぐもつた額まで
斷續しながらずしりと重い
よくよく考へてみると
やたらと人と目が合ふのだが
先刻から黑蜜の闇が
....
燕と擦れ違ふ
蛙の聲を突き拔ける
聯綿と風が觸つて過ぎる
聯綿と風が觸つて過ぎる
聯綿と風が觸つて過ぎる
車輪の先
舟蟲 舟蟲
....
〇 狛犬の洟水たれて{ルビ蛞蝓=なめくぢら}
〇 {ルビ黑南風=くろはへ}の繁きにけだし遁げ隱れ
〇 化の皮返し{ルビ與=あた}へむ羽拔禽
〇 二粒の紅密やかにやぶ枯らし
〇 葛茂せる岡阜蟬蛻そこかしこ
〇 仰臥して悍然たるや蚰蜒の脛
〇 しじんとはかばねのいひぞさしわける
〇 まねけどもにげてたごにぞころろける
〇 うじやうじやとしじんとぞのるさしたかれ
寐起きが良くない。加えて、先刻食った飯粒が胃の中でざらざらと冷えている。
梅雨のこと、外は蕭条たる雨。
雨具に身を包み仕事に向かう。
自転車をぼんやりとこいでいると、右のこめかみが鈍 ....
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