独りきりの夜の隅に

誰の邪魔にもならぬように

ランプの灯をそっとつける

私は低廉なグラスをかかげ

タリスカーをその灯に透かしながら

本を片手に煙をそっと浮かべた


 ....
寂れた街頭の下で踞り

嗚咽混じりに初めて涙を流した

無関係の喧騒の中で

動かずともよいと何かが囁く

その頃はいつも歌が生まれた

言葉を持たぬ血を捧げながら


ゆっ ....
「まだ私を抱いていて」

貴方の部屋に響いた声は

既に誰の声でも無くなっていた

ベッドの傍らのサングラスに映る

エンドロールが滲んで消えた


「貴方の傍にいたかった」
 ....
海と山に挟まれた街の

湾を照らす黄金色の夕日

風の流れる音が聞こえる

鳶の群れが警告を与えている


世界の底にその街はある

虹の彩りが世界を縁取る

空は人の脆さを ....
傷ついてはいけない

傷ついてはいけないと

そんな祝詞の壁の扉に鍵をかけた

風嵐の舞う暗闇に影を放り込んで

流す血の吹荒びを捉えきれずに

錆びつきと凍てつきを押さえ込めずに ....
山際篝ゆく暮照の中で

導かれるままに歩を進めた

街外れのトンネルを抜けて

三叉路の行き先など迷う筈無く

誰の為でもなく光を浴びる


いつの間にか頬を涙が伝う

何も ....
暮六つの宵闇の中に聞く

街の静かなざわめきのうねり

あぁ、夜は街を慰めるために

街は悲哀を和らげるためにあるのだ


理屈では説明できないことがある

雨の夜の街の邂逅
 ....
人は誓いを自ら破って

幾ばくかの情を亡くしていく

その繰り返しを見つめている

夕焼けを縁取る雲になりたい


古い映画に出てくるような

鈍い痛みに耐えかねて吸った

 ....
夜の澄んだ空気にあてられ

街を歩いて湖畔に向かった

ざわめく気持ちに呑まれながら

歩みはただ疾さを増して


静寂の水面が鏡となる

自分の姿をそこに映して

湖島の闇 ....
豪雨の飛沫を前髪に浴びながら

私は新幹線を待っている

左手は携帯を握り

右手にはスタバの珈琲を持ち

きっと重みは1分1gずつ増えている

また、アナウンスが鳴っている

 ....
雲の棚引く峰の間に

薄く光る紫苑の色彩は

遠くに歴史を追いやって

何かを得ようとした時代を照らして


風が稲穂の波を作って

杪夏の香りを運ぶ

また何かを見失おうと ....
茜色の煉瓦の校舎のドアが開く

貴女がその向こうにいるのが分かる

貴女もドアを透かして認知してる

「ああ、いるね」「久しぶり」

何も謂わなくとも全てを理解している


世界 ....
星の異なる空の下で

君の義理は通じぬだろう

潔癖さに救われる人もいる

けれど君はどうだろう


その夜の街は薄幸を灯して

優しい諦めが人を包んだ

誰も悪くないなんて ....
今、私は窓を見上げて

あの時と同じ雲の流れを見てる

積乱雲は夏の雨を呼んで

ふと蝉の声が薄くなっていく


何年の時が経ったのだろう

鮮やかな命の傷みを刻んで

あの ....
灼熱の中に立ちながら

ここまでの道程を思う

陽炎の中でさ迷いながら

呼吸をしていることに気づく


年月の寄辺に佇みながら

喪われた心を思う

歳月の波打ち際にさらさ ....
「貴方の仕事は分からないから」

君はそっと珈琲の水面から顔をあげ

「貴方のやりたいようにしていいよ」

不安気に微笑って言ってくれた


いつだったか君は土砂降りの夜に

車 ....
貴殿方はいつも石の上で踊り

踏みつけているものを見逃している

優雅な踊りに気にとられた人が

別の石でぎこちなく踊り始める


飾り付けを作る人達もいる

疑問符を禁じられる ....
煙草の煙越しに古い写真を見る

空は宵闇を纏い人の声も消えて

瓦礫に埋もれ消えたはずの声が

机に置いた珈琲に淡い波紋を作る


置時計の古びた音が心を刻む

古書の匂いと共に ....
歩きながら感じた空の匂いが

秋の終わりを白息に伝える

また山の麓に立ち止まって

見上げた景色を瞼に遺す


階段を昇るあの頃に聞いた

唄は今は奏でられないけども

今 ....
白砂が敷き詰められた海底に

密かに流るる唄の声主は誰か

岩壁で覆われた筈の闇の

僅かな隙間から漏れ出している


世界が海と空に分けられたのは

命がいずれにしか住めぬため ....
帰りたくあり、戻りたくなく

混沌とした感情が生まれてくる

蓋をした闇が視線を塞ぐ

変わってしまったもの

変わってはいけなかったもの

変えることができたもの

変わらず ....
山と海の近い街

狭い世界で流れる河

自然に澄みきって流れていた

河岸では旅人が愁いの詞を

海辺では少女が愛の唄を

山奥では狩人が悼みの祈りを

人の想いが清流に溶け込 ....
あの頃より孤独でないのは

独りでいられるほど

傷が浅くなかったからなのか

独りでいればいるほど

その痛みが強くなったからなのか


常識のように語られる言葉では

何 ....
また立ち止まり踞る

どうしても拭えない血液は

孤独でなくとも溢れてしまう

前に進んだと思っても

心があの時の景色から動けず


女々しいことは理解かっている

最早こ ....
幼き日の柔らかい心

雑多な痕が出来ていく

罪の意識は何処吹く風で

痛みがあるのが世界だと

頑なに歪さは増していく


心から熱い血が流れて

風に吹かれて夜をさ迷い
 ....
覚えたての洒落た店で

二人語り合った彼方の夏

店と同じくらい世界は窮屈で

幼き日に閉じたはずのもの

貴方とだけ開きあった


瑕疵のない時間を感じ

無自覚な心の裂痕 ....
夜虫の声に涼しさを感じながら

宵闇の日本海に車を走らす

水平線が朱に交わりながら

宙は名月の忠節を保っている


寂れた街に生きてきて

定めに逆らおうと声をあげた

 ....
見渡す限りの金色の景色

頭を垂れて佇む禾乃登に

大地へ祈る人の営みを想う


白雲を侍らせて聳える神々

その肌が微かに息を震わせ

進むも留まるも好きにせよと微笑う

 ....
河の奥底から夜星を見上げる

闇の中に浮かぶ他者の琴線が

視界に流れ来る気がして空を掴んだ

幾つかの唄が鼓膜を震わせた


離れていても貴方を想おうと

世界の底で沸き上がる ....
過ぎ去っていく暮らしの中で

腕の中で抱き締めた匂いは

色褪せぬ記憶とともに生きている

作られた魂に染み渡る気持ちに

名前をつけられずにまた季節を終えた


誰しもが痛みと ....
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タイトル カテゴリ Point 日付
Solitude at midnight (...with ...自由詩4*24/1/9 2:34
have nothing自由詩6*23/12/25 0:31
The Inerasable 自由詩523/10/14 13:39
世界の底で自由詩5*23/10/12 22:15
歩んで償う自由詩122/11/26 15:49
取り戻すこと自由詩222/11/6 1:24
夜の街自由詩022/10/30 19:20
雲になれたら自由詩222/10/29 1:14
夜の湖畔で自由詩522/10/23 11:55
bored boring自由詩122/9/23 19:45
彼の在処に自由詩022/9/21 23:09
奇跡自由詩122/9/15 22:17
星の異なる街で自由詩122/9/15 0:24
赦してください自由詩122/8/14 17:04
真夏の陰で自由詩022/7/31 15:35
あの日々の思いで自由詩022/2/26 1:04
石の上で踊る貴方へ自由詩022/2/26 0:50
煙に巻かれて自由詩2*21/12/19 18:18
時計の螺を巻いて自由詩321/11/23 16:26
歳を経て自由詩121/11/14 23:24
故郷自由詩321/10/24 21:43
痛みの在処自由詩121/10/4 18:30
言の葉自由詩221/10/3 21:30
喪うということ自由詩121/9/30 23:47
自由詩221/9/30 22:13
生きていく意味自由詩021/9/29 1:14
海を見ながら自由詩421/9/23 20:58
辿り着く先 まだ見ぬ景色へ自由詩321/9/22 10:05
再起の夜に自由詩221/9/18 14:26
例え過ぎ去っても自由詩121/9/18 0:01

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