子守歌がきこえて
野は秋色にひらけゆく
かなたを渡るひとひらの雲
古き心のなつかしさ……


夏のかたみに置き捨てられた
小さな竪琴を奏でてゐるのは
優し気にうなだれる草々 ....
一雨過ぎればそれはがらんどうな九月の空

晴れた午後には青いト短調のひとふしが流れる

鳥の運命しか知らない僕らは

夏ぢゆう播き散らされた花の残り香に狂つて

澄んだ微風の失 ....
前回に引き続き、拙詩集『ソナタ/ソナチネ』所収の一篇『落日』を、動画クリエイターの橋本美千夫さんの編集により《映像詩》として制作していただきました。ボイス担当は印あかりさん。今回の朗読は作品への没入が .... 耳を澄ませば年を経た森の童話。
海よりの黒い夜風に濡れて
千の天使が鳥よりもひそかな物語を囁く
打ち捨てられた古代の四月。


 (狩の女神が嘘つきな鈴を鳴らし
  箒星を見 ....
それはむしろ沈黙の季節か
静けさがあどけない恋を焼くのは

お前の微笑みに宿るいつもの翳が
僕の限りない望みをひそかに砕くのは

「フォーヌよ七月の訣れの笛を吹け
 フローラは永 ....
何でもないやうな
大したこともないやうな
永遠なるものが流れてゐた。
そこらの小川のやうにゆつたりと流れてゐた。

しめつた、つめたい風が吹き
茜の雲の、{ルビ一群=ひとむれ} ....
動画クリエイターの橋本美千夫さんが、拙詩集『ソナタ/ソナチネ』所収の一篇「夏の水」を見事な「映像詩」にしてくれました。
朗読は詩人・画家の印あかりさん。使用音楽はショパンの練習曲作品25-1《エオリ ....
星は輝き、
夜霧は流れる。
{ルビ美=うる}はしの、祭の{ルビ山車=だし}よ、おさらばさらば
今日は人生に文句が無い。
静かな夜の公園で、
独りベンチを暖める。
小さな犬が寄つ ....
その朝出来たばかりの仔猫の屍体に、
雪は、しらじらと降り積つた。

屍体は、何にも語らなかつた。
木枯は夜通し窓を鳴らしてゐた。

雪はしらじらと、しらじらと降り、
屍体は何にも ....
長い雨があがつて

まるい空には素敵なパレツト(ひたむきな青)

傘を一本ぶら下げて、僕は旅人になつた。

やはらかな叢に踵をぬらし

見果てぬ夢は遠く投げられ

北極 ....
すずろな雨に日は暮れた。
夜風は時折強く吹き
それは何処から吹くとも知れなかつた。

日暮れて尚雨は降り続け
郵便ポストはほのかに照らされ
誰かの差込んだ茶封筒が濡れてゐた。

 ....
いつしか秋の色もしみじみ深く
高くさはやかな空のすきまには
うまれなかつた光のかなしみなど
きよくちいさくはりつめてゐる

 こんな日はきみとはなしてゐたいなあ
 いつしよにあをぞ ....
つめたい自転のひだひだから風のたましひもきつくかたより

{ルビ伯林青の=ベルリンブルー}それのだまつて行き過ぎるさまは何だ。

とても九月の心ない祈りやみづつぽい敬虔の

能くす ....
昼間の夢と云つたら海の色した童話ばかり。

流線形を解いて身を楽にすると

このかがやきは永遠の答案のやうに姿を消して

はかながる薔薇を秘めた僕らの仲らひに

束の間の雨滴は ....
黒雲はすみやかにちぎれとぶし
さつきまではげしくしげくかはされてゐた
鮮明なエレキテル通信もやみ
すべてきらきらとみだれちる大気の{ルビ狂詩曲=ラプソデイ}
ちいさな北の聖フランシ ....
街いつぱいに風は吹き

何とも夏は近く思はれ

風は膨らみ{ルビ艶々=つやつや}流れ

ブランコ遊びの五歳児は

雲もろともに溶けること、溶けること!

すつかり晴れてて 路地 ....
花がいつせいに咲いたので

風もなかなかお洒落なもので

埃つぽい老婆や街の子たちも

きやすく四月のあどけない挨拶にしたしむのだらう

さはやかなハ調の音階がきこえてくると

 ....
  Ⅰ

うつろな瞳に透徹する秋気の約束。
驟雨を受ける唇の愁しみ――十月!
(鮮やかな{ルビ血色=ブラッドレッド}は落ち……)
一滴照り映える秋蝶の{ルビ微光=ひかり}、
ひそみまつ ....
つめたい万華鏡のまばたきが
角笛吹きの感傷を揺らし
梢のうへから、いやみな天使が
それを微笑つた。
琥珀いろの木洩れ陽と
昼下がりの回想が
共謀して、道化師を泣かせた。
腹立たし ....
凍りついた曇りぞらと

あをぐろく{ルビ執念=しうね}くうねる海の

きたぐに

確然としてくらいちからのくに

俺は心ひそかにきたぐにを愛し

乾燥した都市から遠く北方を ....
ばくてりやがズルズルしてゐる
海はつめたい
人魚も星のやうに震へる
そして都会には温度がない
人々はコゴエもしない
あいかはらず海はつめたい
先カンブリア紀の地層もつめたい
 ....
春の水蒸気は何処に行つたのか
この空は{ルビ禊=みそ}ぎするものの色
永訣の色

地上は百色さんざめき
めざましくもゆたかである

いちめんの輝かしき生存
疾風は田園の暮色をよ ....
遠い話とほいはなし
ああそんなところだね
いまとなつては
大気は海の継子じみて
地中海色のタイルの
すました青磁のなかに透けてゐる
カラカラした浴場のなかで昼寝してたら
いつのまにやらお ....
好い天気だ。
聖地の{ルビ陽光=ひかり}が混じりつ気なく鳴り響く
こんな好い天気だ。
振つ切れたやうな気圏のまつただなかを
透けた{ルビ南風=みなみ}がかるがると翔び
雀の子等はあどけなく驚 ....
{引用=   我が友、田中修子に}



時折西風が吹く
そして天使が笑ふ
するとさざ波が寄せ返し
沖を白い帆が行き過ぎる

砂に埋れた昨日の手紙を
まだ浅い春の陽ざしが淡く照らす ....
某月某日

 20200年4月1日ですね。


某月某日

 どいつもこいつもマスクマスクうれせえや。俺はしてないぞ。タバコも吸ってるぞ。低収入だが給付金は断る。飲み屋のおっちゃんにでも ....
《なんてこたあ ないんだよ》

翼をたたんだカラスがうそぶく

電柱の上に ぽつつりとまつて
さうやつて 世の中をみおろしてさ

ほら ちよいと
武蔵の絵みたいな
構図ぢやな ....
{引用=(*昨年書いて現フォに投稿せず忘れていたもの。アーカイブ目的で投稿。石村)




しつこい梅雨が明け
夏がはじまつた
はず であるのだが
ひさびさに傘を持たずに
散歩なん ....
どういふことだ
まだ
ひとのかたちをして
星の上にゐる

急がなくてはいけない

廃村のはずれの小さな草むらに
菜の花が咲きはじめてゐる
……風にゆれてゐる
やさしいやうな ....
さだめなき世に
年古りて
なにひとつ
新しくもない
年がまたくる

十二月
三十一日
午後十一時
五十九分
五十と
五秒

冬の雨が
雪にかはり

廃屋の時計が ....
石村(74)
タイトル カテゴリ Point 日付
竪琴 (旧作)自由詩9*23/11/14 22:31
口笛 (旧作)自由詩2*23/11/10 19:53
映像詩「落日」おすすめリ ...2*23/11/5 1:10
森の童話 (旧作)自由詩3*23/11/3 17:14
火の月 (旧作)自由詩3*23/11/2 15:23
初冬の風景 (旧作)自由詩3*23/10/28 13:58
映像詩「夏の水」おすすめリ ...4+*23/10/21 16:51
跫音 (旧作)自由詩2*23/10/18 11:17
決意 (旧作)自由詩2*23/10/15 19:26
北に向かつて歩く一日 (旧作)自由詩1*23/10/14 22:22
長雨スケツチ (旧作)自由詩1*23/10/12 17:03
口笛 (旧作)自由詩2*23/10/11 19:03
初秋の気化現象に関する一報告 (旧作)自由詩1*23/10/8 14:00
水滴 (旧作)自由詩3*23/10/7 13:21
暗転 (旧作)自由詩1*23/10/5 12:02
新緑幻映 (旧作)自由詩3*23/10/4 14:15
転調 (旧作)自由詩9*23/10/3 14:21
三つのプレリュウド (旧作)自由詩2*23/10/2 14:52
絵本 (旧作)自由詩5*23/10/1 17:05
きたぐに (旧作)自由詩4*23/9/30 12:44
温度 (旧作)自由詩3*23/9/28 13:42
訣れ (旧作)自由詩10*23/9/27 17:05
裸足 (旧作)自由詩11*23/9/26 10:39
最終戦争 (旧作)自由詩5*23/9/25 22:34
告別自由詩28*21/11/10 21:27
某月某日 ー 詩ではなく、批評でもない、ただの言葉散文(批評 ...9*20/5/6 21:27
春風に吹かれてる自由詩11*20/4/1 14:34
レモンサワー自由詩16*20/3/3 22:32
初春自由詩14+20/2/12 10:56
行く年くる年自由詩11+*20/1/1 0:11

Home 次へ
1 2 3 
0.07sec.