気づけば部屋のすみに重なっていく紙のくさぐさ
服用薬品名カード、やら
保険調剤明細書、やら
ほおっておけば粉雪のような埃をかぶって
畳にみじめに融けていきそうな顔をする
教科書サイズのお ....
涼風たつ坂 くだれば川辺
たっぷりとゆれる 青柳
樹下にたたずめば おとこの腕を
やさしい檻を思い出す
長い髪したひとでした
たてがみみたいに見えました
抱きしめられると 肩に背中に ....
君から出られない
息は できる
天窓には触れられる でも
くぐるにはどうしたって 想い出で肥大した頭が邪魔なんだ
君を壊さなきゃ出られない
恋で肥大した自分ごと砕く覚悟は
まだ、無い。 ....
恋わずらいの人魚に声を貸した
異形がしあわせになるのを見たかった
吟遊詩人の夢折れそうなカラスから声を借りた
喉を巧く操れば 最高に扇情的な旋律が紡げた
人魚に貸した声は戻ってこないだ ....
強い甘さを舌に灼きつけ あとかたも無く消えるキャンディー
とっくに味を失ったのに なぜか噛み続けてるガム
またひとつセロハン紙をはがして くちに含んでるたわけ者
あたしの想い出は 色とりどりの5 ....
はな散って爪塗りなおす薄暑かな
あまいお酒が沁みてるケーキ
まるであたしの脳みそみたい
ねじがゆるくて軽やかだから
きみのことも縛らない ぼんやり見送るの
旅のおみやげは 自慢と ジョッキに一杯のぐちと
アンゼリカみたい ....
フライパンなあのひとが熱くしたあたし
とけて 香って まあるくなって
焦がれりゃ「おんな」のできあがり
皿のうえの色恋が放熱している
磨かれたグラスにたっぷりとミルクを注いで
にがいパ ....
地獄の季節において あゞ 互いが互いのガラテアだった
わたしたちは 恋人という鋳造のバリを許せなかった
許せるものか
あなたはわたしのために創られたひとであるのに
何故バリを恥じることなく笑う ....
夜行性の種族 夜に発光す
厚いカーテンの内側で太陽におびえる彼らのことだ
はかない食欲で栄養を摂取しながら
ただ 西の空が赤く染まるのを待っている
夜光性の種族 夜に発行される暗号文書
....
お気に入りのコンバース
とうとう底が抜けちゃったな
くるぶしがぬるりとつめたくて
出来たての靴擦れを二月の風が撫でて過ぎる
お気に入りのスニーカー
ぼろぼろになっても一緒に歩いて行きたかった ....
トカイワインの酔いにまかせた戯れ事
名残りの花もみんなこぼれちゃったな
煮過ぎた牡蠣みたく全身で挑んだのに
ぬるい関係 軌道は 結局は変わらぬ
寝顔の頬に青い影 おとこのひとだね
伸ばし ....
砂時計がたてる音のように
せつないくらい小さな寝息
双生児より近くて遠い君の
魂には今生でしか触れない
血の味がする朝餉のあとで
鶴を折ってこの運命で遊ぶ
手の熱すらも知らない相棒
サロメが欲しかったのはほんとはヨカナンのくび飾りだったのです
アンティークでとっても素敵 まなこも白羊宮も瞬時にうるむほど
舞いおさめて激しい呼吸 中指と薬指で汗をぬぐっておひめさまは
銀盆 ....
雨音に目覚めた午前3時
枕元に散らかった
言の葉と
夢の残滓を拾う
爪切り用のハサミで
言の葉をさくさくと刻み
オニオンスキンの便箋で巻く
慣れた手つきで擦るマッチ
小出し ....
涙乾けど悲恋は癒えぬ 壺で濃くなる毒の蜜
さて 一度だけふり返り
降りたばかりの船を見る
木犀の香が夜に{ルビ水脈=みを}をひく
徒花とは呼びたくない
旅の仲間が好んでた
南洋の煙草が髪に残る
裏町の匂いだと笑ってた
襟の正 ....
シーツ洗えばまたも雨降り きけよ天 これは祈雨呪術ぢゃないのです
絹のように 第一印象だけ冷たいおとこだった
くるみこまれて にげだす理由もなぜか無くて
けれんもぺてんも要らぬ はじめての人間関係
粉薬みたくあまにがい心臓で駆けぬけたもんだ
さあ 幕引きです ....
アルコールが沁みてくマゼンタの脳みそ
いつでも充血 娯楽室
歌姫がねだるタロットのゆくえは
縁と¥とに欠けている
お嬢さんはつっぱしってく、ほら
かまびすしい夕焼け空を 飛行機雲と併走して
サンクチュアリ とか 信じてないってポーズさ
頑張りすぎる君だから 強がりを肯定する ネガ
静かに味わうラム酒でまた生きてけるって云うし
逃げても無駄って本気で思ってるとしたら僕は何
気づくま ....
北斗七星が傾いて 絵葉書をこぼす
ひらりと指でうけとめる なつかしい君のことば
仙女の写真にうすく 桃の果汁の染み
あいかわらずの筆跡に 白い歯を思いだす
君よりずいぶん遅くに 僕は生まれ ....
雨の子になってみたいな 魂が渇くことなく笑えるでしょう
レインツリー 逃げ込んだなら枝の下 母に似た君に会える気がする
さぼてんが奏でる音色レインスティック 何かと問う声ふるえは止まず
....
「うおっしゃぁぁっ!」われ親ガチャに恵まれり好きなだけ呑めるタフな肝臓
好きな酒 好きなだけ呑めるこの生は 輪廻においてまれなことかも
{ルビ孤閨=こけい}の痛みに耐えかねて 真夜中 菓子焼くキチネット
はちみつ計ってバタ練つて お粉がタルクでないのがつらい
蜜と油にあまくなめされ しっとりひかる 此の両手
貴方のくちにさし ....
誘惑が房なして実る
秋の夜霜に甘さは深まる
罪摘むように紫紺をつまむ
唇に触れる果皮の悩ましさよ
貴方に押し当てたたなごころの狂乱
ぷちぷちとはぜる無数の果実
ああ こんなにたやすく壊 ....
黒いスニーカーに 赤い爪を隠して
きみの隣で揺られてる 私鉄 日曜午後八時
窓に映る顔が白くて 目ばかりが大きくて
きみの隣で疲れを見せてる こんな自分がいや
さっき呑んだ梅酒
リト ....
お菓子なことになっちゃった ってお{ルビ顔=かお}
「かみついたりしないよね?」まあいいか
しっとり系を装うほどは 老けてないし
{ルビ花=はな}ふぶきみたいに恋ごころ吹雪かせては
....
原初の苑でヒトがたべた最初の有害物質 林檎
今 やさしくすりおろされて
病むおさなごのくちびるを癒す
有毒の糧の二つ名はなあに?
蜜をひそめ 彼女はうるんだ声でまろやかに笑う。
あすは大事なひとに会う
あかりを落として伽羅を焚く
あすでくるりと生きざま変わる
あかりを落として伽羅を焚く
あすでくるりと生が変わるなら
いまのわたしは今宵かぎり
さいごのわ ....
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