ポイントのコメント
[渡邉建志]
・「水を泳ぐ魚にとって/ポストはあまりに遠かったのでしょう」は私は好きです。お魚がかわいそうだな、と思える二行で。お魚はきっと何かを手紙で一生懸命伝えたかったのでしょう。それはたしかに「力尽き」という言葉でも伝わるのですけれど、ここで少年とも魚とも違う話者の感情がちらりと垣間見えるのが好きでした。ええ、童話ですから、読んで聞かせる人の姿が見えることは、とても安心することです。 ・構成が美しく。超現実で幕を開け、一般化あるいは感傷で幕を閉じるという形はほかの作品と共有しているのですが、その超現実と感傷という形式が、ここではとても自然に、役立っていて。最後の5行(感傷と一般化(一般化は、あるいは冒頭の超現実に対して置かれる現実、といったほうがいいのかもしれない)を読んで、ほんのりと、「そんじょそこらのお魚と違うお魚だったんだな(ひょっとすると必死に泳いでいるうちに変容したのかもしれない、単に痩せたのかもしれないし、美しく変身したのかもしれない)」などと、しんみり感じました。
戻る
編集