ポイントのコメント
[アラガイs]
愁島の村が秋葉に染まれば、人々は祭りの準備に追われ始める。沖で黒潮が不穏の波音を起てれば、いつものようにきまって台風がやってくる。たまに隣町の誰かが、稀にない大きな台風だと吹聴して廻る。不安に駆られた村人は、早々と果実の実を枝からもぎ取った。万全な用意と、まだ疑心暗鬼な風向きに苛立ちながら待ちかまえていた。次の日の夜が明けると土工たちは掛け声を響かせ、木戸を叩き続けた暴雨もいつしか干し草の滴にかわる。町から魚売りがやって来て、台風は二日前には大きく右に逸れていた。後には腐った果実の実だけが、村の畑を彩っていた。
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