ポイントのコメント
[不老産兄弟]
 ガランドゥスについて今でも議論が絶えないのは、おそらく彼が、自身の言葉の中で「神」を、従来の「神」と呼ばれるものと同義で用いていたかどうかを決定付ける文献が未だ発見されていないからであろう。彼が反グノーシス主義である事を裏付けるには、まず、従来の神神そのものに対する彼自身のパースペクティブが異端とされるのか、また、グノーシスの「悪の宇宙」のシステムそのものに対して彼は批判を行っているのかを明確にした上で、後者を証明するのに十分な資料が必要となってくるだろう。  これは少々偏った私見ではあるかもしれないが、彼が反グノーシスであるとするにはあまりに不自然な点が多いように思う。彼がもしも「悪の宇宙」に対して批判を行っていたとすれば、世界に内在する神の存在をこれほどまでに強調する必要性があっただろうか。つまりアルコーンの存在を肯定することなしに、神の内在、つまり物理的な意味で人々が神に近づくことへの執着はありえなかったのではないかということである。そういう意味で、彼はグノーシスの主義そのものについて批判しているというよりは、むしろ世界の外に存在し、決して近づくことのできないといった、グノーシス主義の「神」の概念に対しての不安の表れであったと考える方が自然ではないだろうか。
戻る
編集