忘れ物/プル式
 
時々僕は呼吸を忘れて慌てて取りに帰ります。
呼吸を忘れているので慌ててゼイハアしようにも出来ません。
そこでそろそろと家の玄関を開けて呼吸を取ってきます。

時々僕は筋肉の使い方を忘れて慌てて思い出そうとします。
布団から起きる時はまだ寝ぼすけみたいで良いのですが
ごはん時に忘れるとお腹が減って目の前にあるのに
箸すら持てなくて如何したものかと途方に暮れてしまうのです。

時々僕は生きているという事を忘れて慌てて食べ物を探します。
絵などを描いて調子に乗りすぎて気が付くと三日たっていたりするので
ふらふらになりながら慌ててファミレスに駆け込みます。

さて空腹の僕は限度というものを忘れて慌ててトイレに駆け込みます
ファミレスで半日以上食べ続ける僕は時々財布を確認しながら
それでも慌てて空腹を満たすために注文を繰り返すのです。

ところが人の顔も名前も嫌なこともすっかり忘れる僕にしては珍しく
高校から先忘れていない考えが有ります。
人間とは忘却することで生きていけるのだ。
あはは なんだか偉そうでしょ。

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