「その海から」(41〜50)/たもつ
 
馬は海を見ている
その尻尾にはランプのように
ほのかな灯がともっている
待合室のソファーでは
妹のいない船長が
簡単な説明を受けて頷いてる



48

人々の歓声があがったので
そちらの方を見ると
人々、に良く似た
一人の人だった
他人事とは思えない
上手な埋め方を
おぼつかない
手つきで
口つきで



49

ホームセンターの
生活雑貨売場に
誰かの修飾語がうちあげられていた
もう何も修飾することなく
干からびるのを待つだけだった
さしたる根拠のある話でもないけれど
その場所からはいつも
男が自慰をする
狭そうな窓が見えた



50

夜が明けるころまで
足に合う靴を探し続ける玄関が
海の前に広がっている
やがて足音は魚影となり泳ぐのだが
まぶた、と思うとそれは
静かに閉じられてしまうのだった




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