小説『Is it no use crying over spilt milk?』(1)/宏
――――僕は人に夢を与えられる人間になりたかった。
きっかけはなんだったのかよく思い出せないけれど
沢山の人を感動させたり勇気を与えられるような
大した人間にずっとなれるつもりでいたんだ。
『Is it no use crying over spilt milk?』
風が冷たい。
こんな日はあの子の事が気に懸かる。
彼女の日課は駅前で歌を唄う事。12月も半ばに差し掛かり、聞きに来る人たちも少ないだろうにそれでも毎日決まった時間に彼女は、ギターを片手に座り込んでいるはずだ。
今日は思いのほか仕事が早く片付いた。急いで向かえばまだ駅で歌っている事だろう。
彼女は大学の後輩だった。
自分が音楽系のサークルの部長を勤めている時に入ってきたのだ。
よく自分に懐いてくれて、ほとんど初心者の彼女にギターなどを教えていた。
小柄でかわいらしく、黙っていればいくらでも男が寄ってきそうな容姿をしている。
黙っていれば・・。
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