春の泥、にじんで/たりぽん(大理 奔)
 

影を踏むように
引き留めても
すり抜けて
肌に服にはりつき
ぬぐいきれない汚れのように
透明でいとおしい
たんぽぽが
そこにあった、ということ

   ロゼッタの刻印を
   あぜ道に残して
   いってしまう季節の
   きてしまう季節の

去年と今年はあまりちがわなくて
百年前と今はまったくかわってしまって
ちょっとずつちがう明日ではなく
色あせてしまうほど昔の思い出でもなく
かわらなくて、
あなたはかわらなくて
かわらなく、なってしまって

ひきとめることのできない
まるで影をつかむように
いつもそばにあるのに
だれのものでもなくて

透明でいとおしい
命をつないだという証と
たんぽぽが
そこにあった、という

刻印がいつまでも
あなたの名前のまま
そこに



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