春かげろう/さくらほ
 
3月のつぼみをほどかぬよう
小さく軽くノックする
唇をつけるほどにのぞきこむ
私のこころ乱すほどその姿美しく
手の平で包んで奪い去ってしまいたいと言ったのなら
快活にあははと笑うだろう
君の世界を変えるものは私じゃないと知っている

傾く心はありふれたチューリップのように
自分の力ではどうにもこうにも真っ直ぐにならぬ
それでも倒れてしまうほど思いきりもなく
時折ゆれて
時折ふるえ
いつか君に手折られるのを待っていると言ったのなら
面白そうにあははと笑うだろう
君が連れ去るのは私じゃないと知っている

それでも静まらぬ動悸は
私を春色に染め
陽炎燃ゆるごとく体は熱を発す
何も悟られぬように
屈託のない笑顔の横で私もあははと笑う
君のその頬のつややかさが憎い

春狂おしく
微熱さめやらぬ夜

   グループ"君の歌 "
   Point(9)