セイコさん/ふるる
 
小さい頃からお世話になっていた診療所には
セイコさんがいた

しなびた手のお年寄りで
診療所の奥で薬の調合をしたり
患者がいなくて暇な時は掃除をしたりしていた

小さい頃はよく風邪をひいたけれどそれも減り
中学生になり
社会人になって
ごくたまに風邪をひいて診療所に行くと
まだセイコさんはいた

相変わらずしなびた震える手で薬を調合していた
雪のような白髪で
喋ることはなく
(多分、耳が聴こえないんだろうと母が言っていた)

それから年月がたって

昨日は子連れで帰省して
子供が熱を出したので診療所に連れて行ったら
先生は若先生になっていたのに
まだセイコさんはいた

お久しぶりで、と言おうとしたけれど
セイコさんには聴こえないのだと思いやめた

作り終えた薬をよたよたと運ぶセイコさん

子供用なのか
飴が一粒、薬の袋に入れられていた

帰り道で
「セイコさんて男なの、女なの?」と子供が聞いた

   グループ"?不思議シリーズ?"
   Point(13)