セイコさん/ふるる
小さい頃からお世話になっていた診療所には
セイコさんがいた
しなびた手のお年寄りで
診療所の奥で薬の調合をしたり
患者がいなくて暇な時は掃除をしたりしていた
小さい頃はよく風邪をひいたけれどそれも減り
中学生になり
社会人になって
ごくたまに風邪をひいて診療所に行くと
まだセイコさんはいた
相変わらずしなびた震える手で薬を調合していた
雪のような白髪で
喋ることはなく
(多分、耳が聴こえないんだろうと母が言っていた)
それから年月がたって
昨日は子連れで帰省して
子供が熱を出したので診療所に連れて行ったら
先生は若先生になっていたのに
まだセイコさんはいた
お久しぶりで、と言おうとしたけれど
セイコさんには聴こえないのだと思いやめた
作り終えた薬をよたよたと運ぶセイコさん
子供用なのか
飴が一粒、薬の袋に入れられていた
帰り道で
「セイコさんて男なの、女なの?」と子供が聞いた
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