憧れの人に会いに青い海を渡ろう/虹村 凌
 
珈琲屋に寄って一休み極めてる間も
彼が桟橋を一番先まで駆け抜けている間も
彼女が砂浜から上がったテトラポットの上で踊っている間も
秒針が俺の人生を刻一刻と追い詰めていく
みたいな事が言いたいんだけど上手くいえない

ポケットに入れっぱなしになっていた
薄べったくなった煙草に火をつけて
薄らぼんやりとそんなことを考えながら

瞬く間に満ち満ちていく潮を見ていた
左右から押し寄せる波の合間は
引きが強いから
足元の砂がズルズルと溶けていく感覚が大きくて
面白かったんだ
彼女も面白そうに笑っていたよ

ふと足元を見ると
カナブンが引き波にさらわれそうになっている
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