創書日和【紅】百日紅/大村 浩一
 
二ヶ領水の川辺のゆうぐれ
木の花が赤く咲いていた
その花の名前を思い出せない     *1
妻に名を訊ねたが
覚えてくれないからと
怒って教えてくれない
それでもなお訊ねるとようやく
百日紅(さるすべり)と答えてくれた
見ればなるほど幹が茶色でなめらかだ
記憶の手も滑ってしまったか
いちど見分け方を知れば
忘れることはない
頭の中には
背中を丸めたい夏の記憶も幾つか   *2
あると思って探すと誰かが見つけてしまう
ないと思って探すと誰も見つけてくれない
この紅が懐かしい色になってくれるかどうか
夏が終わり花が散る
日々は飛ぶように過ぎる


2009/9/29
大村浩一

*1 角田寿星の詩作品の表題から
*2 奥主榮の詩作品から
   グループ"創書日和。"
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