海辺の散歩/佐々宝砂
光る魚の頭が
いくつもいくつも覗いていました
目にしみるほどの腐臭でした
なんて素敵な雰囲気だろうねと
あなたは笑いました
でもあなたは知っていたはずです
そこが
わたしたちの夢みる海辺ではないことを
日がかげりはじめていました
あなたはもう帰ろうと言いました
それで
わたしたちは帰りました
あなたが帰りたがっているわけではない家へ
ルルイエの伽藍とは似ても似つかぬ家へ
わたしは夕食を作りながら祈りました
たくさんの足を持った紫色の蛸のようなものに
残虐に喰われて死にたいと
あなたはテレビのニュースを見ていました
どこかの国で政権が崩壊したと言いました
でも 夜空が突然に崩壊することはない
ええ 明日も わたしたちは凡庸に生き続け
明日の明日かまたその明日かに
凡庸に死ぬのです
参考文献 『魔道書ネクロノミコン』(学研)
ラヴクラフト全集(東京創元社)他
小詩集"Poem room of Arkham house"より
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