テケリ・リ!/佐々宝砂
 
して
 俺の全てを消化しろ

 テケリ・リ!

原始的な胃の中で
ケツァルコアトルスは
いとも簡単に消化されていった

さてそれから幾星霜
地べたを這っていた連中は
いつしか頭を空に向け
空を見上げることを覚えた

けれど彼等はやはり地這いであったので
歩くに適した脚は太く
骨盤はどっしりと厚く頑丈で
知性やら愛やらに適するとか称する脳髄は
複雑なうえにずっしり重く
その脳髄を収める頭蓋は重く
その頭蓋を支える背骨は重く

醜い地這いの子孫たちは
重い身体を地に横たえて
空を見た
どうしても飛ぶことはできない
空を見た

そうしていると
遠い昔に消化したはずの
ケツァルコアトルスの小骨が
喉のどこやらに突き刺さり
しくしくと痛み
ちいさく鋭く叫ぶのだった

 哀れな地這いよ
 俺は軽い
 俺は脆い
 俺は薄い
 だからこそ
 俺は飛ぶ

 テケリ・リ!


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