口をあけた貝はまるで生きているようだ/ベンジャミン
 
同じように口をあけてみる
僕はまだ死んでいない

ふつふつと煮えた湯の中で
味噌汁になるために生まれてきたわけでもない
貝は口をあけて互いに噛みついている

痛々しい塩加減を確かめるとき
殻に抱かれた生身がかすかにふるえている
食われることを自覚するには遅すぎた
貝は生きているかのように
湯気にむせかえる

椀によそわれたいくつかは
すでに身を投げ出して殻だけとなり
きっと底に溺れているのだろう
その身もやがて食われる

そして
かたくなに口を閉ざしたままのお前もまた
抵抗するまでもなく
死んでいるのだと

せめて一声を聞きたくて
口に放り込んでみる

  
   グループ"タイトル長いー詩"
   Point(5)