ぼくは鬼ごっこの名人だったんだ/ベンジャミン
目を閉じてひゃく数えるあいだの
静けさがこわかった
(いーち にーい さーん)
ぼくはずるだと言われるのがいやだったから
はんぶん泣きそうになりながらゆっくりと
(しーい ごーお ろーく)
じゅう数えるあたりまで何となくきこえていた
みんなの声が聞こえなくなると
ぼくは自分の声を少し大きくして数えたんだ
(じゅーいちっ じゅーにっ じゅーさんっ)
みんながどこにかくれているのかを想像しながら
みんなをつかまえたときの自分を想像しながら
(きゅーじゅーきゅっ ひゃーくっ)
数え終えた
その瞬間の沈黙が一番きらいだった
淋しさを埋めるように
ぼくはもう狂ったようにみんなを探したんだ
ひとり見つけ
ふたり見つけ
さんにん見つけ
みんな見つけてやった
そうやって
ぼくは鬼ごっこの名人になった
ひとり見つけ
ふたり見つけ
さんにん見つけ
いったい何人見つけたのだろう
ぼくはただ
ひとりでいるのがいやだったんだ
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