星屑みたいな夜に/千波 一也
 
んと
おばさんに
なっていくのも
いいかも知れないね

あの頃は
苦労したな、なんて
言いながらさ



おれ、
汗っかきだから
手なんかつないだら
すぐにジメジメしちゃうんだけど
浜風が、さ
ちょうどよくて

きみは寒いっていうけど
ほんとにちょうどよくて

黙っていたら
シーンとしている感じも
ちょうどよくて

さびれた町だけど、さ
忘れられないって
そう思った
ほんとに



ささいなことだけど、さ

そういうものに
目が向かなくなったら
かなしいことだから

きみと渡った
ちっちゃな橋のこと
忘れたくないんだ

繁盛してない焼き肉屋も
怪しいネオンの居酒屋も
ふらりと寄ったラーメン屋も
充実してない本屋のことも



みんな
通りすがりのことだけど、さ

みんな
きみと見てきたことだから
ありがとう、って

またね、って

きみと
にぎる手に
少しだけ力を入れたりして

夜風のなかで
しょっぱく
なって





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