武士のきもち/佐野権太
舐め上げている
ちぃー、ちぃーと呼んでみる
が
まるで振り向かない
懐(ふところ)に温めておいたカレーぱんを
ちぎってくれてやる
と
去っていった
匂いも嗅がずにだ
都会のちりと化した、ぱん屑が
ぽつん
こんがり焼かれている
あんだーすろー
平たい石を
あんだーすろー
着水してホップする
きもち
ねばって、ねばって、波紋
ななつ!
*
気を取り直して
暖かそうなベンチに座る
カレーぱんをひとくち
齧(かじ)る
もうひとくち
齧る
口の中に
懐かしい母の味が広がっ、、、
ない!
母が いない!
袋を確認すると
カレー風味ぱ
[次のページ]
前 次 グループ"武士道"
編 削 Point(34)