「錆びたトタン」より/ベンジャミン
雲に隠れていて
いつもより暗い世界のことを
まだ瞳を閉じたままの木の実は知りません
トタンの上で
見上げているつもりになっていました
波のように訪れる
それは不安というものに
ちょっとでも気を許せば逆さまの誕生が
簡単そうな音色を奏でます
せめて朝が来るまで
こうしていられたらいいと思いながら
すっかり気が遠のいてしまった
記憶は留めておけますように
生まれて初めて眼をあけたとき
小さな葉っぱが光を受けて
その鼓動が
命と
その季節の感動を
だんだんと伝えてゆくのですね
錆びたトタンはすっかり茶色になって
まるで土の匂いも感じませんが
ぼろぼろと泣くこともせず
剥がれ落ちそうな優しさを今も抱えています
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