紫君/なかがわひろか
 
年を経り我を育てた人は我を見離す
己の欲望を満たさんとし
理想の女に育てた彼の人は
遺恨の場所に我を遺し
嗚呼何処へ

周りを見渡せど
雄の臭いを振り回す獣以下の殿方が
我に微笑み返すだけ
見合う男はもう居らぬ
何処の彼の方を恨むのみ

醜い女が捨てた君
玉のように麗しい
他女の手には触れさせぬ
外界の光を閉じ込めた
其方を光とせむばかりに
小さな城で我が心を満たす

輝く君となった人
見合うお人になられたと
我は一人喜びし
されど我の顔に刻まれた
時間の距離は埋められぬ

彼の方と同じ匂い
我を惑わせ狂わせる
しかし貴方はあの頃の
我と同じく我を愛さん
露に成り行く我が身を

貴方は愛してくれぬでしょう

嘆きに揺れる
我の声
其方の胸に
届かんと

(「紫君」)

   グループ"アナザー・ストーリー"
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