ヤコブの梯子/佐々宝砂
 

少年が生まれたときまだ時代は華やかだったと

流れてくる音楽が俺を憂鬱にする
しかし俺にはできない
低い声で「その曲はやめろ」とは言えない
たとえこの店が俺のものだったとしても
バカバカしくてできやしない

恋人がサンタクロース と
歌っているのは俺より十は若そうな女
俺の眉間にはきっと皺が寄っている
俺はぐいぐいと水割りを飲む
それからストレートを注文する

サンタクロースは交通事故を起こさない
川に車を突っ込んで
自分一人生き残ったりはしない
ぜいぜい騒ぐつぶれ損ないの肺に
煙草の煙を自ら吹き込んだりはしない

カラオ
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