ピュグマリオン/佐々宝砂
 
れていたと信じたのは
つかのまの錯覚
あのひとが夢見ていたのは
わたしのなかのあのひと

まだまともに動く両腕で
身体を支えて
柵から身を乗り出す
強風が騒いでいる
悩むことはない
簡単なことだ
わたしは金属を捨てる
プラスティックを捨てる
シリコンを捨てる
現世のわたしを構成するすべてを捨てる

わたしを呼ぶあの声は
あの常に聞こえる低い呼び声は
わたしを上へと誘う

けれど
わたしは
ひとりでは行かない

あのひとと行く

ひとり遊びは
もうやめると誓ったのだ


2.

朝焼けの光を浴びて
他人の服を着る気分で
ぴらぴらきら
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