プルシャプラの石工/佐々宝砂
も山羊も牛も空高くそびえる山も
彫ってあらわすことができる
だとしたら仏陀よ
俺は貴方の御姿をもあらわせはしないだろうか
このようなことを考える俺は不遜だろう
不遜なのだろう
貴方の御姿を描いてはいけないと
それは禁じられたことなのだと
俺は教えられてきた
しかし仏陀よ
俺はどうしても彫ってみたいのだ
夜毎の夢にあらわれる貴方の御姿を
どうか俺の不遜を許したまえ
俺は俺の力の限りわざの限り鑿をふるい
貴方の御姿を眼に見えるものとしたいのだ仏陀よ
ストゥーパに納められた偽の骨よりも
俺は貴方の御姿をこそ残したいのだ仏陀よ
俺の名など残らない俺はつまらぬ石工に過ぎない
しかし仏陀よ
貴方の御姿は残るだろう
千年の後も
そのまた千年の後も
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