未来/アンテ
食べると
身体が浮き上がって
同じように水面の向こう側へ消えた
それからも次々と塊が沈んできて
ある魚は「鼻」を
別の魚は「爪」をという具合に
塊を食べては水面の向こうへ消えていった
いつの間にか魚はみんな姿を消し
いちばん臆病な魚だけが残された
岩陰にひそんでいると
小さな塊がひとつ沈んできた
魚は長いあいだ塊を見つめていたが
意を決してそれを齧った
やがて身体が軽くなり
魚は浮かび上がりながら
どんな世界が待ち受けているのだろう
もっと強くなれるだろうか
生まれてはじめて
心を弾ませた
魚のお腹のなかで
「欲」という塊がゆっくりと溶けていった
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