嘘の物語/アンテ
 
                           (喪失の物語)



彼女が大切にしている
ガラスの瓶には
嘘のかけらがたくさん詰まっていて
かけらをひとつ噛み砕くたび
嘘をすらすらとつくことができた
なにかに行き詰まったとき
どうにも身動きがとれないとき
かけらを食べて嘘をつくことで
窮地を脱することができたが
次の日には効力が消えて
つじつま合わせに奔走するはめになり
もう二度と嘘などつくまいと誓ったが
別の問題が起こると
彼女はやむをえず入れ物に手を伸ばした
歳を取るにつれて
一筋縄ではいかない問題が増え
より複雑な嘘をつくためには
かけらを幾
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