回遊する少女3 (セロリ)/佐野権太
あなた、セロリの透明なきりくちに
恋をしたことはあって?
栗いろの瞳
かきあげる仕草
車椅子の少女は
細すぎる膝を斜めにそろえて
やさしい朝のふりつもる
白いキッチンは
ひかりの子どもたちの寝息で
満たされているの
窓をあけて
風たちの報告をきいたら
野菜をとりだして
手際よく
しゃばしゃば起こしてあげるわ
ひらかれてゆくセロリの誘惑には
逆らってはいけないの
レースの裾にくるまって
ぼんやりしている寝ぼすけくんも
ほら、せえたあの丘にのぼって
のぞきこむわ
[次のページ]
次 グループ"回遊する少女"
編 削 Point(23)