創書日和「爪」/虹村 凌
君がいるこの街を僕は何も知らない
君がここにいる訳さえも
ただほんの少しの駅前の通りを歩いて
似た人を見ては違うとつぶやいていただけ
格好悪いったらないだろう?
僕がいるあの街を君は何も知らない
僕がそこにいる訳さえも
もしあの時の薄暗い部屋の中に戻れたら
きっと君は背中に爪を立ていたと思うんだ
勝手に一人でそう思ってるんだ
格好悪いったらないだろう?
ジリジリと焼ける背中
太陽がギラギラと輝いて
追い風なんか吹きそうにないけど
大丈夫
僕は生きていける
いざと言う時でも一人でどうにかできる
背中の爪あとなんか思い出しもせずに
格好悪いったら無いだろう?
それでも僕は
いつも爪を短く切りそろえているんだ
格好悪いだろ?
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