創書日和「雪」 雪睫毛/半知半能
 
などを考慮して葬儀と火葬が行われた
葬儀の前に一目見たおばあちゃんは
まるで人形のように小さく
もののようでした
ずっと無感動に式を過ごし
骨壷の奇妙な生温かさが印象的でした



踏みしめられていない雪原のような冒しがたさを湛えた白い肌
遠い約束を待つように閉じられた瞼
動くことのない雪睫毛



ボストンは今年はとても暖かくて
葬儀も終わり正月明けも早々に再渡米してからも
しばらく雪は降らず
やっと最近少しずつ降るようになりました
ちらちらと舞い落ちる冷たい雪を見ていると
なんでかおばあちゃんを思い出します
おばあちゃんと一緒に雪を見たことはなかったけれど

くじけないでね、って
それが海を越えたところにいる孫への
最後の託し言だった


ねぇ、おばあちゃん
一人で過ごす今日の夜は
熱した眼に雪を受け止めて
今更に泣いても、いいんでしょうか 
朝の寒さに涙が凍り
雪の合い間に隠れないうちに




 
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